講演者:重宗 宏毅(早稲田大学)
題 目:印刷法を用いたロボット作製法とその数理
日 時:2017年3月29日(水) 18:00-
場 所:早稲田大学西早稲田キャンパス63号館 4階 420教室
司会 お時間になりますので本日の数理人セミナーを始めたいと思います。本日の講演者は重宗宏毅さんです。岸先生のほうからご紹介していただきまして、そのままの流れでお二人のタイミングで始めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
岸 よろしくお願いいたします。早稲田大学理工学研究所の岸と申します。私、この数理人のセミナーで去年9月に講演をさせていただきまして、そのきっかけがこの数理人セミナーを取りつけられている山中先生という方がいらっしゃいまして、山中先生ももともと自分と同じ理工学研究類次席研究員だったということで、今いらっしゃる石井さんに次席研究員の間のOB飲みみたいなものをご企画いただきまして、そこでちょっとお話が盛り上がって、じゃ数理人で話してみたらということにきっかけになったお話をさせていただいたというきっかけになります。
数理人は一回発表すると次の方をぜひご紹介という形になっていまして、そのときにぜひここでお話ししてもらったらおもしろいかなというのをすぐに思いついたのが重宗くんだったので、彼のほうにやってみたらと声をかけたら快く引き受けてくれまして、そういう形で本日お願いしました。
重宗君自体の紹介をこれからさせていだたきますと、今はもともと別の研究室にいたんですがこちらに記載されているとおり、総合機械工学科の菅野研究室の今博士後期課程に在学されています。それと同時に今は学術振興会特別研究員のDC1でもありましてご研究を続けられています。ご専門はペーパーメカトロニクスと言いまして、本日もその話をされていくかと思いますけれども、折り紙のようなロボットというものの研究をずっとされています。
もともと修士は、早稲田大学の先進理工学部応用機械応用物理学科の橋本周司研究室のほうにいらっしゃいまして、博士からは菅原研究室のほうに移ってご研究を続けられています。これまでも留学とかも積極的にされていまして、これまで官民の協働海外留学支援制度トビタテ!JAPANの3期生ということで、イタリアのSSSAに研究のため留学されていたり海外でも積極的にご研究を続けられています。
これまで、まだ博士の1年なんですが、いろいろな海外の学会でも受賞をたくさんされていまして代表的なものを挙げさせていただきますと、ロボットの世界最大の国際学会だと言われますIROSという学会があるんですが、そちらにJTCFノーベルテクノロジーペーパーアワードフォーアミューズメントカルチャーという賞ですとか、あるいは2015年度経済産業省のイノベーティブテクノロジーズという賞も取られたりしていまして、活発にご研究をされています。
本日は、これらのこれまでに行われてきた研究をまとめられまして、タイトル「印刷法を用いたロボットの作製法とその数理」ということでご発表いただく予定になっております。ではよろしくお願いいたします。
重宗 本日はお忙しい中お集まりいただき、本当にご協力ありがとうございます。僕は、「印刷法を用いたロボット作製法とその数理」ということで書いたんですけれども、結構どうしてもやはりエンジニア寄りの話になっちゃうので、でもロボットを研究されている方が過半数以上いそうなら、うまく自分の研究を紹介できたらとは思っています。
初めてこんなに長い間話しして、なおかつ自分の研究を体系的に見つめ直したので、もしよろしくければ何か皆さんから突っ込みとかあって対話的にお話しできたらいいなと思うので、何か質問があったらいつでも、もう手を上げなくても適当に口出してくださるとすごいうれしいです。よろしくお願いします。
目次としてはこのようになっております。まず研究背景として、僕の研究のキーワードを4つ挙げさせていただきました。印刷法と紙と折り紙と折り紙ロボット、折り紙と折り紙ロボットがかぶっていますが、折り紙がどのようにロボットの中に今まで利用されていた、今までというか最近利用されているかというのを紹介させていただきます。この4つに対して背景を紹介させていただきます。研究目的を紹介し、提案手法といたしまして、まず最初に、私は実際に設計とまず印刷でロボットをどうやったらつくれるかという設計と開発を行ったのでその説明をし、その後、デスクトッププリンタとカッティングプロッタを用いたらどのようなロボットがつくれるかというのを提案したので、その説明をし、最後に立体紙回路基板というのを開発したので、その立体紙回路基板を開発して、そしてそれによってどのようなロボットがつくれるかというのを提案したのでそれについて紹介させていただきます。最後に全体のまとめを発表させていただきます。
まず簡単に、先ほど岸さんも紹介していただきましたがペーパーメカトロニクスというものを紹介させていただきます。ペーパーメカトロニクスを簡単にまとめますと、シート材料に各要素を印刷することでロボットを作製する分野だと私たちは考えています。一番左の図のようにまず紙、最初にまず紙の上にロボットの各要素になる部品を、この場合はアクチュエータを印刷しているんですけれども、アクチュエータを印刷した紙を最後にインクジェットプリンタで印刷することで、そのインクジェットプリンタで印刷した線に沿って紙が自動的に折れ曲がって、アクチュエータに電気を流すと駆動するというのを我々は開発しました。これをペーパーメカトロニクスと名づけ、このペーパーメカトロニクスによってつくられた印刷法によるロボットの特徴といたしまして、まず簡便・迅速な印刷法の特徴による生産性の向上が期待できるということと、印刷することでロボット作製時の特定の、例えばハンダづけや組み立てるなどもそうですね、そういう特定の技術を自動化できるんじゃないかとか、あとそもそも二次元印刷パターンからロボットの機能がどういうふうに創発されるかという新しいロボットの見方を提案できるのではないかということを期待して我々は研究してまいりいました。
こちらは4つの印刷、紙、折り紙、ロボットがキーワードで、それぞれについて順番に、まずは印刷について紹介させていただきます。
まず簡単に印刷法、印刷がどういうふうに発明され、そして発展してきたかということなんですけれども、印刷は世界の最古の印刷物として残っているのが日本の百万塔陀羅尼、764年に作製されたものが今も残っています。これは筆写だった文章を簡便に複製する手段として発明されました。これは大体100巻印刷されて、100巻印刷するためには木版と銅版という印刷の仕方があったんですけれども、この100巻の印刷の量から木版ではなく金属活版を使われていたのではないかとか言われていて、古来から日本でも印刷というものが用いられていたという。さらに印刷と同時に紙を大量生産する必要があるので、紙の大量生産は105年に蔡倫が発明してから紙という文章を記載する媒体が開発され、古来よりずっと活用されてきました。
こちらが今、使われている印刷技術の大まかな流れというかまとまった表となっております。主に大きく分けて二つありまして有版式と無版式というものがあって、有版式の中で有名なものというとスクリーン印刷やオフセット印刷、グラビア印刷などは雑誌などの印刷に利用されています。無版式印刷だと皆さんよく使われるインクジェット印刷、あとはカッティング切り文字やレーザープリンタも無版式印刷と呼べます。
それぞれまず有版式印刷について簡単に説明すると、有版式印刷は右の図のように版を用いて版からインクを落とし出すことで印刷物に対して印刷をするという手法です。主に利点といたしまして、大量生産性が高いことやさまざまなインクが印刷できる。粘度や表面張力や粒径などを気にせずインクを押し出すことで印刷できます。ただし欠点として、そもそも版をつくらないといけないという工数が多い、手間がかかる、時間がかかる、お金がかかるというのがありますし、異なるパターンをつくるためには毎回新しい版をつくり直す必要があるという欠点があります。右の図はスクリーン印刷の例になります。
一方、無版印刷はインクジェットプリンタやカッティングプロッタなんですけど、利点といたしましては初期費用が小さい。版をつくらなくていいのでこのプリンタを買ってしまえばそれだけで終われます。版がいらないので、初期工数も小さくなります。。なおかつ、印刷データをつくってそれをプリンタに入れることで印刷できるので、手軽な点が挙げられます。しかし、特にインクジェットプリンタなんですけど欠点がありまして、大量生産性に劣る。家庭用のインクジェットプリンタで大量に紙を生産しようとなるとどうしても1枚1枚が時間がかかってしまので、大量にヘッドを用意して一気にばっと印刷できれば大量生産もできなくはない、そういう工業生産法で何か電子デバイスをつくられている会社とかもあるんですけど、こういう家庭用インクジェットプリンタだとヘッド数が少ないのであまり大量に一気にたくさんの紙を印刷するというのはできない。インクの特性も、家庭用のインクジェットプリンタの場合だと、家庭用のインクジェットプリンタのヘッドに合わせて何かをインクを使わないといけないので、表面張力や粒径や粘度がすごい限られてくるんですけど、粒径とかがもし大きかったからヘッドが詰まってしまって全然インクが打てないとかそういうことが起きてしまうので、この点では有版式印刷に劣ると言われています。つまり、小ロット多品種生産には無版式印刷は向いていると思います。
私たちは今回ロボットというのを必要なときに素早く作製できるといいなということを考えまして、インクジェットプリンタやカッティング切り文字を用いて紙を切って印刷することでロボットがつくれないかと考えました。今、インクジェットプリンタは2次元インクジェット印刷といいましても大きく分けて二つのものがありまして、産業用インクジェットプリンタと家庭用インクジェットプリンタというものがございます。上が産業用インクジェットプリンタでDaimatix DMP-2850、富士フィルムさんがつくられているものなんですが、こちらは主に研究開発などに使われているんですけど、利点としてはヘッドの特性を調整したりヘッドを交換ということがありまして、インクをつくり込む必要がないんです。自分がつくりたい特性を持ったインクをつくってそれをプリンタに入れてやれば、あとはヘッドを調整するだけで印刷ができる。なおかつそのヘッドがもし壊れたり詰まってしまったりしてもヘッドを交換するだけでまた印刷できる。つまり研究には非常に向いています。ただし高価ということで、インクジェットプリンタといっても本当にピンキリで、家庭用だと2万円とかですけどこれは600万とか700万とかするのが普通で、研究開発用で使われています。あとヘッドが1個しかないので印刷できるインク量も少なく、もしたくさんの量を印刷しようとなると、すごいたくさん重ね塗りをして何時間も、これぐらいのものを印刷するのに何時間も待たないといけないということがあります。一方、私が今回研究に用いているのは家庭用インクジェットプリンタということで、皆さんが普段ドキュメントなどを印刷するのに使われているんですけど、安価で大体2万円弱ぐらいでプリンタは買えますし、デザインソフトのデータを入れるだけで簡便にそのデータを印刷できます。欠点といたしましては、ヘッドは調整も交換もできないので、インクをつくり込む必要があって、私も自分で作製したインクをプリンタの中に投入して印刷しているんですけど、インクのつくり込みを表面張力とか粒径とか粘度をつくり込む必要があったり、ヘッドが壊れたら多分、改良がうまい人だったらつくり替えたり直したりとかできるでしょうけど、僕はそういうのはできないので壊れた本体ごと交換するということで、取り回しが良くないです。実際、上でうまく下のプリンタに合うようなインクをつくり込んで、上でテストしたものを下で印刷するみたいなやり方をされている方がいるんですけど、僕は今、上を使う機会がないので、今どうしたらいいものかなと思っております。
では印刷でロボットというこのキーワード二つを組み合わせたらどういう話になるんだろうかということで、ロボットといいますと、主にメカトロニクスの構成要素は5つのもので、制御部、センサ、エネルギー源、構造、アクチュエータに分けられると考えられます。制御部とは、いわゆるトランジスタのようなアクチュエータへの動作司令を行う部分で、センタは温度センサや圧力センサなどいろいろありますけど、機構の状態を計測し制御部に受け渡す装置となります。エネルギー源は、電池であったりスーパーキャパシタであったりなど、アクチュエータのパワー源となるものです。メカニズムはアクチュエータによって操作される運動系。アクチュエータは機構を動かす駆動装置。これらを印刷でつくれないかということを我々は考えています。上側の三つ、制御部、センサ、エネルギー源に関しては、右側は元早稲田にいらっしゃって今は名古屋大にいらっしゃる竹延先生の研究なんですが、フレキシブルな基板に対して有機溶剤に溶かしたインクを印刷することでトランジスタをつくられた。フレキシブルな基板な上にインクで印刷で、薄膜なトランジスタを作製することで手で折れ曲げられるようなフレキシブルな電子部品をつくることができる。こういうのはウエアラブルなデバイスに応用できるのではないかと今注目されています。これは制御部の例ですけど、センサ、エネルギー源もプリンテッドエレクトロニクスという分野で盛んに研究されています。一方、構造やアクチュエータのほうのいわゆるメカニクスと言われるような部分を同時に印刷してつくろうと考えられている方はいませんでした。私は先にプリンテッドエレクトロニクスに、構造と動きを付与することでどのような機能の向上が期待できるかというプリンテッドメカニクスとも呼べる部分の研究を行いました。
まず順番に、上のほうのプリンテッドエレクトロニクスの紹介をさせていただきます。
制御部、トランジスタの印刷の話です。先ほどの竹延先生の研究の続きなんですけど、SiO2基板の上に金電極をスパッタリングして、その上からカーボンナノチューブを印刷してやるとトランジスタができる。こちらの研究で用いているのは産業用インクジェットプリンタで、なぜかというと、カーボンナノチューブは分子間力が強いため分散性が低く、すぐ凝集してしまうんです。凝集してしまうと、家庭用インクジェットプリンタで打とうとするとヘッドが詰まってすぐ打てなくなるということで、産業用インクジェットプリンタで逐一超音波分散機とかに入れて、カーボンナノチューブを分散させてプリンタに投入して、使い終わったらまた分散してみたいなことを繰り返すので、家庭用インクジェットプリンタじゃなくて産業用インクジェットプリンタを用いて作製されています。
駆動特性というものはこのようになっていて、大体このようなインクジェット印刷は、インクジェットでトランジスタをつくるという話になると、ゲート電圧をどのように下げるとか、ドレイン電流、この電流、これはドレイン回路というマイナス1ナノアンペアなのでほとんど流れているようで流れていないような感じなんですけど、この電流値をどうやったら上げることができるかとか。一番大切じゃないですけど、大切なものとしてON/OFF比もあって、この一番下の状態と一番高い状態のときにどれぐらいの電流差を取り出せることができるか、10^7から10^8ぐらいで取り出せていると性能の良いデバイスと言われていたりします。ヒステリシスであったり、一度プラス側に流した後にマイナス側に戻したときにどういう特性を示すかということがトランジスタの性能としては重要で、いろいろと研究されています。こちらはSiO2基板で堅い基板なんですが、これをポリイミドでナノプラスチックのフレキシブルな基板に印刷してやるとこのように指で折り曲げることができるトランジスタもつくることができます。
続いてセンサです。こちらは東大の川原先生がされている研究なんですけど、家庭用インクジェットプリンタを用いた配線印刷というのはもともと東大の川原先生が提案されていて、僕もこれを使わせていただいたんですけど、この家庭用インクジェットプリンタを用いて右のような圧力センタを開発されました。この研究の特徴といたしましては、そもそも紙が可撓性が高く安価である。さらに家庭用インクジェットプリンタで手軽につくれるということで提案されています。さらに右のようにコイルを使って、このセンサから線を出さずにコイルを使って非接触で測定値を読み取ることができるというメリットもあって、IoTやウェアラブルデバイスとの親和性が高いと考えられています。
次にエネルギー源です。上のは3D印刷です。3Dプリンタで小さなリチウムイオンバッテリーをつくった研究となります。正極用材料にLFP、負極用材料にLTOを用いて、そのインクを3Dプリンタに投入して印刷することで作製します。正直これはもう工場のようなものなんだなと僕は思うんですけど、これは3Dプリンタだけを使ってエネルギー源を作製した研究の例となります。
3次元印刷ではなくて2次元の印刷という意味では、紙の上にカーボンナノチューブを塗ることでスーパーキャパシタをつくったのが下の例で、電極はカーボンナノチューブ、基板には紙を用いています。紙とプラスチック、基板として使う際に有利、不利があって、紙の利点としてはプラスチック材料よりも紙にインクが吸収されることでインクが基板に定着しやすいというものがあったりします。プラスチックだと乾燥すると剥離が起こったりしてしまうのに対して、紙だと乾燥してもそのまま紙に定着しているという安定性があるということになります。
次に、構造とアクチュエータをどのように印刷でつくられているかというほかの研究を見ていきます。もちろん3Dプリンタといえば構造を印刷しているという最たる例で、最近、東大の杉原さんがReady to Crawlとい研究を行いました。3Dプリンタでこの構造をつくって、この構造に対してモーターを乗せると何かもう生物のような動き方をするロボットができるという。その3Dプリンタで簡便に構造が作製できて、そこからその構造をうまく利用して生態模倣的な動きを取り出せるというのが非常におもしろい研究だと思います。こちらがプリンタされた構造でモーターを回すことでこのように動く。モーターも使われている数は少なく、プリンタされた構造をうまく協働させることでこのような動きをつくることができるということになっております。これが構造を3Dプリンタでつくった例になります。
また折り紙、こちらは印刷ではないんですけど、最初のロボット折り紙というか、自動で折れるシートをつくるという形で、最初の研究は2009年に始まったんですが、形状記憶合金と磁石をうまく利用することでこのように勝手に折れる折り紙をつくられました。電流を流す部分を変えるとほかの構造にもなることができるということです。折り目をつくるというのがなかなか、自動で折り紙をするという研究では難しいんですけれども、この方たちは磁石をうまく利用することで折り目をつけられているところが特徴としてあるかと思います。また、これは透明なプラスチックシートに対してインクジェットプリンタで黒い線を引いてあるんですけど、この黒い線に対して光を当ててやるとこの黒い線に沿って構造ができていくという研究になります。先ほどのこちらに比べて本当に印刷するだけで、あとは光を当てたり熱を加えることで構造ができるという面は非常に手軽です。このように自動で折り紙をする研究のことをセルフフォールディングというんですが、このセルフフォールディングの研究は本当に大きいところから小さいところまで、マクロなスケールからミクロなスケールまでいろいろなサイズでやられていて、特にミクロなスケールでは人間の手で触れないような、人間で折り紙できないようなサイズのスケールのものも勝手に折り曲げることで曲げることができます。細胞を使ったりDNAを使った折り紙をされている研究者もたくさんいらっしゃいます。僕の研究もその印刷をすることでセルフフォールディングするという点の特徴があります。
続いてアクチュエータの印刷です。こちらは、ポリウレタンフィルムの上にカーボンナノチューブを塗ることでバイレイヤー構造をつくって、カーボンナノチューブに電流を流すと発熱してポリウレタンフィルムに熱が伝わることによってアクチュエートします。このように4本の足のロボットをつくったりもできます。カーボンナノチューブは導電性が高くなおかつ放熱性もよいので、熱アクチュエータというのは後で僕の研究でも利用しているのでちょっと説明するんですけど、応答性が悪いということは言われているんですが、この研究は比較的よい応答性で動きます。
こちらは、紙の上に静電アクチュエータを印刷した、印刷というかインクを伸ばして塗った例となるんですけど、これらの構造をつくって、これらの構造に対して電圧をかけると、これはジッパーアクチュエータというんですけど端っこから順番にぺたぺたと紙がついていくんです。静電アクチュエータというのは静電気力というのは距離の2乗に比例していくので、すごい小さいスケールで優位なんですけど、この構造をうまく使えば最初は小さい変位なんですけど、それをだんだんだんだん最終的に一番端っこがくっつくことになって、大きい変位として取り出すことができるという、MEMSの世界でよく利用されている原理です。これは、このジッパーアクチュエータの原理を利用して下のようなロボットの駆動に利用した例です。これが印刷でアクチュエータをつくったものとなります。
ほかにも3D印刷でアクチュエータをつくったという例がこちらの研究になるんですけど、3Dプリンタでこのように一気につくって、これがすごいのは、これができるんでけど、この中に液体が入っていてアクチュエータとなっているんですけど、その液体まで3Dプリンタで一緒に印刷をしているという点すごいおもしろくて、これは本当に工場みたいになっています。これらをプリントしてやることで、後からブルートゥースモジュールやモーターなどは取りつけてはいますが、3Dプリンタで印刷したロボットが事実的に動くという提案では非常におもしろい研究になっています。
また、右側はストレッチャブルなひずみセンサを3Dプリントで印刷した例で、これも右下にあるような設計図、構造を3Dプリントで一気に印刷してやって、そうしたら右上のようなセンサができて、これをデバイスにつないでやることでひずみを測定できるということになります。ここまでがロボットと印刷の関係についてでした。
続いて紙です。紙に着目して話をしたいと思います。
紙はさまざまな特徴を持つ紙が大量生産されていて、いわゆる紙というと新聞紙、印刷紙、包装紙、衛生用紙とはトイレットペーパー、ティッシュペーパーとかちり紙のことなんです。雑種紙だとトレーシングペーパー、書道の半紙、和紙、このような紙の種類があって、それぞれの特徴も本当に違って、紙はパルプを流すことによって作製されるんですけど、その流す際に網の上にパルプを落としていくんですけども、その網のほうを向いているのか網のほうを向いていないのかによって紙の表裏が決まって、その表裏によって特徴が変わってきたり、紙の厚みを調整できたり。また強度も変わってきます。新聞紙とかトイレットペーパーとかは特に引張にはすごい弱い紙だと思いますし、破断もしやすいですね。透明度も変わってきます。紙目というものがあって、これも作製工程の際に出る特徴なんですけど、パルプを流すことによって流していく方向によって繊維がそろっていくので、流していく方向によって縦目だったり横目だったりの紙ができます。また保存性や印刷適正なども変わってきて、これらはさまざまな研究をされている方がいて、このような強度を持ったこのような透明度を持った紙をつくりたいと思えばそれをつくれる方がいたり、それを大量生産されていて、このようにいろいろな紙がつくられているという面では非常にユニークな材料なのではないかと思います。
この紙の特徴を利用してつくられた紙デバイスというのはこのようなものがあります。こちらはどちらかというとペーパーエレクトロニクスと呼ばれている、紙の上にどのように電子部品を作製するかというものの例です。大体、電子部品の場合は基板が大部分を占めるので、基板の性質を変えることでその部品の性質に大きな影響を与えるんですけど、その基板に対して植物由来の材料であるセルロースを利用することで、環境適合性の高いデバイスを作製できないかということでペーパーエレクトロニクスは研究されています。左上がメモリです。紙の上にメモリをつくった例で、紙の上にメモリをつくっているので、このように温度を上げていくと燃えたり裁断も可能だったりするため、さらに紙なので使い捨てだったり、プライバシー、保守性を高めたいときなどに用いられるようになるかと研究者らは提案しています。
また、紙の上にディスプレイをつくった例がこちらの研究となりまして、このように紙の上に3~4層印刷することでインタラクティブなディスプレイを作製することができるという点が研究されています。これはスクリーン印刷ということです。このように貼ったり紙が直接ディスプレイになったりするので発展が続きます。
こちら側はエレクトロニクスではないんですけど、紙の上に紙の良さを利用しているデバイスの例になりまして、右上がグルコースなどの分析システムで、こちらのマイクロ流動の中にグルコースが、入っているかどうかわからない液体を投入することでグルコースが入っているかどうかを確認することができます。従来だとそもそも測定するための初期投資、装置を買うための初期投資で50ドルで、なおかつこの1個の軸が0.3とかだったんですけど、提案したこちらのデバイスを用いると、これだけを用いて色を判定するだけでグルコースがあるかわかるので、初期投資も必要なくなおかつ1個0.05×n個でできる。つまりnが大きくなればなるほど、前の係数が大切になってくるので、大量生産、例えば発展途上国に大量に配りたいとかとなると紙で安価でつくったほうがよりいいと。大量生産に強い測定器となります。こういうものは大体清潔であることが非常に大切になるので、感染症とかすごい問題になっているので毎回使うたびに使い捨てるということを考えると、なお安いほうがいい。下は紙で顕微鏡をつくった例で、このように紙でできた顕微鏡をのぞくことで最大50時間、一つのバッテリーで最大50時間見ることができて、紙でできていますが非常に頑丈になっている、なおかつ1ユニット1ドルでつくることができるという。紙でありますが、非常にいろいろなさまざまなタイプの方式を適用可能で明暗視野、蛍光などいろいろな観察方法ができます。これを用いることで感染症の元となる寄生虫の観察や特定ができるのではないかと医者は提案しています。こちらが紙のメリット、紙のよさを利用した研究の例と考えられます。
続いて折り紙の紹介をします。折り紙というと、日本の伝統技術を想像される方が多いと思いますが、産業などでも非常に応用されています。展開可能であることなどを利用して、宇宙分野や医療分野などで利用されています。こちらがその例です。こちらは展開するソーラーパネルになります。ちなみにこのロバート・ラングさんというのは昔から非常に複雑な折り紙をつくられている、このようなものを折り紙でつくってしまうという研究者の方で、右側にあるように、右側がそれぞれ赤と青が山折り谷折りをあらわしているんですけど、このように折っていくことで下にあるような動物がつくれるということになっています。このようなのはコンピュテーショナル折り紙といわれていて、多分、筑波大の鶴田先生がこの間ここの数理人で発表されていて、多分僕より詳しく説明されていたのであまり突っ込まないほうがいいのかと思うんですけど、これは東大の舘先生という方がこのうさぎの折り紙をどうやったらつくれるかというのを動画であらわした例で、展開図に沿って折ればできるということで、実際に折るのは、折り紙の研究でもやはり手で折るか自動で折るかというのも大きくありまして、折り紙の研究で折りましたといってよくよく見てみたらすごい折るのが大変だったりしたという研究もあったりして、その辺をどう簡単にしていくかというので、自動で折り紙を折る人たちは考えたりしているんですが、これを僕の研究を使って折れるかと言われると実はそれは多分難しくて、やはり人間の手はすごいなと、こういうのをつくれるヒューマノイドロボットとかができたらすごいなと思います。大体10何時間ぐらいかけて折るという話を聞いたことがあります。
折り紙といってもいろいろな流儀じゃないですけど、本当に長方形の1枚の紙から何か物を折るという人たちもいますし、ちょっと切ったような正方形ではない形の紙から、この場合、1枚の紙から折るというのを折り紙をする人たちもいますし、あとはその紙に対して切断を加えて切り紙やペーパークラフトのようなものを用いられている方が多いです。
こうやって折っていくとこうなります。
このような複雑な折り紙、コンピュテーショナル折り紙というものを研究されている方もいて、特に明治大の萩原先生はこのような自動で折り紙を折る3次元プリンタシステムを用いて医療現場だったり都市開発だったりホビーとかに用いられるのではないかというのを提案されていたり、筑波大の三谷先生は、このような折り目を折るとこのような折り畳み構造ができるというもののソフトを開発されていたりしています。このような構造をつくるためにどのような展開図をつくらないといけないかという研究をされている人たちもいて、本当に幅広い分野になっています。こちらは、ナマコ折りというものが出ています。ナマコ折りというものを利用した血管ステントで、このような構造を血管の中に入れてやって、伸縮の引張をしてやることで血管を広げることができるということです。
折り紙で折ることでさまざまな特徴を紙に付与することができるのが非常におもしろくて、上が三浦折りという有名な折り紙方法で、こちらが動画になるんですが、このように山折りと谷折りを順番に起こしていくと、先ほどの宇宙ソーラーパネルなどにも応用されていましたが、このように展開可能な構造をつくることができる。
本来、折るとか切るとかというのは物質を弱くする方向に働くと思われることも多いのですが、折ったり切ることで構造に新しい特徴を付与したり、この吉村パターンもそうなんですけど、このようなダイヤモンドの構造を得ることで強度が増して、これはサワーの缶に応用されています。あとさっきも言ったナマコ折りなど、このような折り方を工夫することでどのような特徴を紙に応用することができるのかというのを研究されている方もたくさんいます。
折り紙でロボットをつくっている人たちはどのような人たちがいるかといいますと、この前IROSでフォールディング・イン・ロボティクスというワークショップがあって、このような先生方が発表されたんですが、私も同じワークショップでこちらの先生方共に招待講演を行いました。これに招待されたときは世界的に自分の研究が認知されていることを実感して、うれしかったです。これはとても有名な研究なので皆さんご存じかもしれないですが、このようにロボットの基板の上に電池を置いてやるとどんどん構造が自動で組み上がっていって、これがどのように組み上がっていくかというのは事前に、この中に回路が仕込んであるんですけど、その回路に順番に、どういうふうに電流を流していくかというのもロボット側で制御してやりながら、これがすごいのは組み立てから動き出すまで全て自動で行われているという点で、そろそろ動き出すと思うんですけど、このように足を回転させることでそのまま動いてどこかにいなくなっていくというおもしろいロボットになっています。
こちらは、タイヤに対して折り紙を応用した例で、展開だったり収納が可能なタイヤ折り紙の構造を利用してつくり、段差踏破性をよくしたり狭い構造に対して入っていくことができるようなロボットをつくられたソウル大学のキュー・ジン・チョー先生の研究で、こちらはかなり昔から折り紙ロボットをされていた、折り紙ということを意識されず1枚の紙からどのように軽量のロボットをつくるかというのを研究されていた先生なんですが、レーザープリンタでカットした図案をこのように折ることで、このような虫のような形をつくって、これが動くことができるという。今ではもう少し大きいサイズのこれぐらいのロボットなんですけど、そのロボットがゴキブリのようなすごいスピードで動いたりしていて、折り紙の持つ軽量さというのを生かした研究となっております。こちらがさっきちょっと動画の中で流れましたがMITの方がされている自動で折り曲がって磁石の力を利用して動き出すという折り紙ロボットなので、これは豚の胃の中に入れて電池を取ってきたり、体内カプセルにして体内に投入してその後体内の中を自動で動くロボットになるんじゃないかと。自動で折れる紙、小さい物でも折れるという特徴を利用したものです。ほかにも生体の表面に対して何かフィットするような形に自動で折れるシーンとかできるのではないかと提案されている人もいます。
セルフ・アセンブリ・自動で組み立てをやったり、ディプロイアブル・展開可能であったり、ラピッド・プロトタイピング・素早く作製できる。スケアラブル・小さいものから大きいものまでできたり、なおかつ軽いというような特徴を持っているのが折り紙ロボットと考えられます。
こちらはさっきも自動で勝手に折れて、なおかつ勝手に動き出すロボットの研究の詳細なんですけど、このように5層、ポリスチレン、紙、回路基板、紙、ポリスチレンの順番になっていて、折れる原理といたましては、Bのような構造のときにポリスチレンの部分が熱を加えると曲がるんですけど、Bのような構造の場合、下はつながっていないので縮まないんですけど、上のほうは縮むのでCにあるように下に対して曲がる。Bの場合は、どちらもついていないのでヒンジとして働くことができるという、これを利用してモーターからアクチュエートを取り出すと、右のような形ができます。先ほどもちょっと説明しましたが、このようにどういう順番で電流を流すかという、この回路基板のところにこのように固体インクプリンタで配線をつくるんですけど、この配線でこのような回路を使ってどのように順番に電流を流していいか、1アンペアぐらいの電流を流して熱を発生させることでポリスチレンの熱収縮を引き起こすんですけど、その具体的な基板がCのようになっていて、すごいのが自動で組み立つ際に、モーターのピンに対して自動で組み立っているというのがすごくて、勝手にピンに対して折り紙のできた穴がはまっていくという。ここまで制御できるというのがこの研究のメリットだなと思います。
また、これは同じグループがやっている別の研究なんですけど、この3Dモデルから自分で展開図をつくり出して、さらにその展開図を利用してどういうデザインをしたら自動で折れ曲がるシートができるかというのをつくって、それを熱源の中に入れておくと、このように勝手に折れ曲がっていく研究になります。その3Dモデルを提示したら、その実物をつくるまで勝手に自動でソフトウエアが展開図を考えてくれるという点がすごくて、それを実際に構造をつくるまで応用した。これは人間がつくったわけではなくて、コンピューターの中にモデルを入れたら勝手に出てきたという感じで、そのとおりに物をつくれたら欲しい立体構造もできるようになると思います。大体システムはこのようになっているんですけど、最初に3次元の3Dモデルがあって、どれくらいの折れ方がそれぞれの折り目に対してあるかというのを計算して、そして折りパターンの山折り谷折りを生成し、そこからこの構造をつくる際にどのようにシートのデザインをしたらいいかというのを設計します。それを実際につくってみると形ができるという。ここまでを全てやってしまっているということがすごいなと思います。
これは原理はほとんどさっきと一緒なんですが、上と下のギャップの差を変えることで折れ角度を制御できるというのはありまして、上のAだと上のほうがすごいギャップが広いのでよく曲がっているのですが、Bだとギャップが狭いのでその分ストッパーも早く働いて小さく折れ曲がる。このギャップ角度をうまく使ってやると、そのギャップの長さと折れる角度の関数が取れるので、それをうまく利用すればこのような構造をつくりたい際に角度を自動で持ってくることができるということです。
こちらがさっきの折れた後に自動で動くロボットになりますけれども、このようなシステムとなっていまして、下の台にコイルが6つ置いてあって、そのコイルでうまく磁場を操ることでそのロボットに磁石がついているんですけど、そのロボットの磁石が反応して駆動するというようなものになっております。 水の中に入れて溶けるようなものや、導電性を持つもの、あとアセトンの中で溶けるものなど、いろいろな材質を使ってこんなすごい小さいサイズのミクロなロボットをつくることができて、うまくその磁場を制御すれば障害物を、このような自分よりも大きなサイズではないですけど、ある程度な障害物を踏破可能なものができるという研究になっております。
長々と説明しました。このように印刷や紙や折り紙やロボットと、今はこの辺を合わせた研究がペーパーメカトロニクスの着眼点で、この辺の印刷、紙、折り紙、ロボットが持つ良さをうまく私の研究に生かせることができたらいいなと思って研究を進めています。
研究の構成としてはこのようなものになっていて、私は今まで構造と配線とアクチュエータに注目して印刷を行ってきました。
順番に説明すると、最初に構造に関しては自動立体構造形成、そもそも紙を印刷することでどのように構造が形成できるかという手法を確立し、それで今度はじゃあ切った紙はどうやって印刷して、そして印刷したらどのような構造ができるかというのを考えて、次に配線のほうに行くんですけれども、配線のほうは、最初はペンであるとかヘラを用いて直接塗布していたんですけど、それをインクジェットプリンタでインクジェットプリンタの中に銀ナノ粒子を搭載することで、インクジェットプリンタで印刷することで配線がつくれるというロボットをつくって、一番最近の研究では構造と配線をチャプター2の時点では2枚の紙を用いていたんです。構造の紙と配線用の紙、別々の紙、それを張り合わせることでロボットを作製したんですけど、今回の一番最近の研究では構造と配線を1枚の紙に対して印刷することで同時設計できるという手法を開発しました。
アクチュエータに関しましては、まず最初にこの紙、印刷の構造をつくるための紙の上にあらかじめ印刷できる電気熱アクチュエータを開発して、その電気熱アクチュエータの特性を解析して、その解析結果を利用してさらに高応答、大変形する紙電気熱アクチュエータを開発したのがチャプター2。さらにこのチャプター3で静電接着を利用した、電気熱アクは熱の拡散に支配される、どうしても応答性が悪くなるという欠点があるので、応答性の良い静電アクチュエータをどのように紙印刷ロボットに応用できるのかというのを考えてみました。上から順番に説明をしていきます。
まずチャプター1です。紙の上に印刷して構造とアクチュエータをどのように付与できるかという研究です。印刷法を用いた機構とアクチュエータの開発と統合ということで紙面上に印刷法を用いて、構造形成とアクチュエータの搭載を行う。構造形成には高揮発性インクによる紙の構造形成電気、インクと紙の相互作用による紙の自動立体構造形成。紙を基板とする電気熱アクチュエータを開発して、紙面上に右下にあるんですけど、紙の上にエポキシ樹脂とカーボンインクを印刷するので、電気を流すことで可逆的に屈曲するアクチュエータを開発し、これらを組み合わせることで歩行の紙のロボットを開発しました。
まずこちらの紙の構造形成をどのように開発したかについて説明します。
もともと2012年にスイスの芸術家のChristophe Guberanさんという方が、全く僕がインスピレーションを受けたような内容で、展示会に出展されました。この時点ではどのような素材が使われていてどのようなインクを使われているか、どのようなプリンタが使われているかというのは全く起案されていなかったので、私は一から器具や材料の選定を行いました。最初は家庭用インクジェットプリンタの性質とか、どうやってカートリッジの中にインク詰めるとか、どうやってインクをきれにするかとか、そういうところから研究したので、実はこれを再現するまでに半年ぐらいかかったんですけど、最終的に印刷した線で紙が自動で折れ曲がる手法を確立しました。
解析を行いまして折れ角度を、これは印刷する線の幅、紙の厚さ、質量、紙目によって角度が変わってくるんですけど、それが経験的にわかっていったので実際にどうなるかというのを知るために測定を行いました。角度の測定法といたしましては、紙の上に印刷してこのように折れ曲がるんですけど、どれくらい折れ曲がったかというのを右のような角度で定義してやって、画像解析ソフトを用いて3回印刷して3回画像解析ソフトで解析した平均を取ったのが右の結果となります。
右上の結果は、横軸が線幅の長さです。どれぐらいの幅で印刷したか。上が折れる角度。プロットの違いは湿度の違いで、湿度が高いほど、多いのは72%が一番高いんですけど、高ければ高いほど折れる角度が弱くなる。先に言うのを忘れましたけど、横軸は線の幅なんですけど、線の幅を上げていくと角度もどんどん大きくなる。大体それが線形の関係を示すということがわかりました。これで考えられるのは、紙が湿度に弱いというか、湿度に対して敏感なので、紙が湿気を取り込むことで構造が、強度が弱くなってそれによって曲がる角度が小さくなるのではないかと仮定していますが、まだそこはちゃんと確認できてはおりません。下は紙目です。先ほども説明しましたが、紙には紙目というものがあって、長方形のものに対してこう紙目が流れていたらT目と呼んで、長方形のものに対してこう紙が流れた場合に言っているんですけど、紙目に対して例えばY目のものに対してこういう方向で並行に印刷してやると角度が大きくなるので、上のオレンジのような灰色のような角度、大きな角度が得られて、紙目に対して垂直に塗ると下の黄色いと青のような、紙目によっても角度が変わってくるということが確認されました。
次がアクチュエータです。電気熱アクチュエータをどのように開発したか。原理としましてはバイメタルのようなものなんですけど、上の図に書いてあるとおりになっていて、紙の上にまず熱膨張層となる樹脂が塗ってあって、さらに導電層となる導電インクを塗ります。その導電インクに対して電流を流してやると、ジュール熱で導電インクが発熱するので、その発熱が熱膨張層に伝わり、熱膨張層の樹脂のほうが紙よりも膨張率が高いので、熱膨張率の差で熱応力が発生し、このように屈曲すると。先ほどの紙は、1回印刷して曲げてしまうと、電気をかけたりしても元に戻らないんですが、この場合は電気をオフにしてやると自然冷却によって、また元の平らな形に戻って、ある程度ヒステリシスがあるもので完全に元に戻るというわけではないんですけど、元に戻ってまた電流をかけることで曲がる、屈曲すると、そのように可逆的な応答ができるアクチュエータとなっております。カーボンアクチュエータの構成はこのようになっていて、先ほども言いました紙の上にエポキシ樹脂とカーボンインクを塗っております。
それぞれ大切な特性としてカーボンは導電率、エポキシは熱膨張係数があって、それぞれこの値になっていて、その印刷法もこの時点ではまだスパチュラで塗布したり、メイヤーロッド法という印刷法を使っていたりと、インクジェットプリンタではこのときは印刷されていませんでした。
このように、一番上の黒いカーボンインクの端っこに銀ペーストを塗ってやることで異調な電流がこのように、銀ペーストのほうが抵抗値が低いので、まず銀ペーストに対してでん理由が流れて、カーボンインクに対して電流が流れるということで、一様な電流に伴う均一な温度分布や断面積などの増加に伴う抵抗値の減少を期待できるのではないかということで、実際に温度測定をしたところ、ある程度一様な温度分布を得られることが確認できていたりして、これによって均一な温度分布を得られることで低温でかつ低電圧、抵抗値が減少することで低電圧の駆動ができるようになりました。
また、こちらのアクチュエータに対する特性解析を行いました。具体的に行ったものとしては、さまざまな紙厚や印刷厚や樹脂を利用することでどのような応答が得られるか、出力が得られるかというものを解析しました。一番上のAが薄いですね、一番薄いアクチュエータ、エポキシを利用した薄いアクチュエータ、Bはエポキシを利用した厚いアクチュエータで、Cはポリウレタンを利用した薄いアクチュエータです、どちらかというと。紙厚は、もう売っている時点で紙厚が決まっていて、この紙厚の紙が欲しいと思えば、それは変えるので従来技術で調整可能だという点で、この実験がしやすいというのが紙の利点としてあって、樹脂厚もメイヤーロッド法というものは、メイヤーロッドの溝の深さでどれぐらいの樹脂を塗るかという塗布量が決められるので、樹脂厚も印刷で調整ができるということで、このようにアクチュエータ特性を紙の厚さや樹脂の厚さを変えることで調整ができるというメリットも、このアクチュエータにはあります。
解析方法としては3つ行いまして、まず実験をしました。紙の上にエポキシを塗ったもの、ポリウレタンを塗ったものをオーブンに投入して、平衡状態に落ちるまで待って、どれくらい実際に変位したというものを画像解析で測定します。
また同じようなモデルをつくったものを有限要素法解析で、どのような状態になるかというのを解析したり、最終的にティモシェンコさんが考えられたバイメタルの熱応力の式を用いてどのような曲率、どれぐらいの変位が得られるかという解析解を得ました。
これらの実験と有限要素法と解析解の結果を比較したものが右の図となっていて、まず全ての結果は近い値となっていて、実験と解析解の結果が近いことからこちらのアクチュエータが私たちが仮定していたバイメタルの原理を利用して駆動しているというのがわかりました。また、解析することによって物性値を推定したのですが、このアクチュエータを利用する際に必要な紙の物性値で、熱膨張係数だったりポリウレタンの熱膨張係数であったりというものをこの実験から得ることができました。
最終的にこの結果を利用して、電気熱アクチュエータを印刷した紙に対してそれを家庭用インクジェットプリンタに投入して印刷することでこのような構造が得られて、そこに電気を流すことで一方向に、印刷したアクチュエータで駆動して印刷した構造を用いて一方向に動くロボットを作製しました。こちらが紙ロボット前足部の変位の時間変化で、前に動いていることがわかります。1ステップ6.7ミリ、80秒の間に動くロボットとなっています。電圧としては8.3から8.8ボルト。電池3個分ぐらい動きます。電流は0.8アンペアで熱アクチュエータなので少し熱を食ってしまう。エネルギーを食ってしまうという問題点はありました。ただ、印刷したアクチュエータを用いて印刷した構造から運動を生成したという点では新規性はあったんだと思います。
次に今はプリンタを使っていたんですけど、今度はさらにカッティングプロッタを用いて紙を自動切断することでどのようなロボットができるかというのを提案しました。このようなカッティングプロッタで切った紙をインクジェットプリンタに印刷してということを行うのと、また先ほど解析した結果を利用してどのような導電性インクやどのような樹脂を使うとよりよい特性を持つ電気熱アクチュエータをつくれるのかというのを行い、またそれを組み合わせたロボットをつくりました。
こちらがカッティングプロッタも応用して構造形成した結果が右側で、この手法のよい点は、先ほどの熱応答性高分子を使っているハーバードのグループとかは、何か熱源に入れたり熱を加えたりしないと折れ曲がらないんですけど、これは紙とインクが反応することで勝手に折れ曲がっていくので、この辺に放置しておけば、ちょっと湿気が高いと紙の強度が弱くなって折れ曲がりが弱くなるんですけど、この辺に置いておいても何か外部からエネルギーを与えずとも折れ曲がるという、省エネルギー性の面ではよい手法と思います。印刷する線の幅や切るパターンを変えることでいろいろな構造、このような構造をつくることができて、左のような切断をカッティングプロッタでやって、真ん中のようなものをインクジェットプリンタで印刷してやると、先ほども申しましたとおり線の太さで角度制御可能なので、このような立方体のような構造を作ることができたり、ちょっと見づらいですけど、右側の真ん中のはすごい細い線を横にばっと並べているんですけど、そうやって並べることによって曲面形状を得ることができて、右の球体のような形ができたり、多数のインクジェットプリンタは一度で精細なパターンが書ける多数の折り目を印刷することも可能で、このように切断した紙に対してこのように一度に印刷することでサッカーボールのようなか形をつくることができたり、一つ言っていなかったんですけど、紙に対して上から印刷した場合、紙はこう折れ曲がるんです。この方向にしか折れ曲がらなくて、両面印刷をしてやらないと山折りと谷折りが実現できない。両面印刷を設定してやると右のような山折りと谷折りが同時にある紙飛行機のような形ができるということを提案しました。
さらに、大変位かつ高応答な電気熱アクチュエータの開発を目指しました、先ほどと原理は全く一緒です。紙の上に熱膨張があって導電層があるというのは一緒なんですけど、先ほどご紹介しましたほうのアクチュエータはカーボンとエポキシと利用していました。それぞれ導電率と熱膨張率がこうなっていたんですけれども、今回の銀インクアクチュエータでは銀とポリウレタンを利用していまして、熱膨張係数がエポキシよりも高いなおかつ導電率もカーボンよりも高いということと、なおかつこの銀は先ほどの東大の川原先生が三菱製紙から技術提供を受けて設立したベンチャーのAgICさんのインクを利用しているんですけど(2017年12月現在、エレファンテック)、インクジェット印刷は同じ構造形成用によって使うプリンタと同じインクに銀のカートリッジを入れることで銀を印刷しているという、それで回路を印刷できるという点でさらに簡便になりました。こちらはさっき紹介したカーボンアクチュエータの駆動動画で、このような駆動をします。スイッチング時間が50秒かかってしまっていたのを、紙の上に銀インクを塗って、その上からポリウレタン樹脂を塗ってやることで電圧値が7.3から3.1の半分、電流量も小さくなりエネルギー消費量は少なくなって、スイッチング時間も15秒/15秒とカーボンアクチュエータと比較して早いスピードで動くようになりました。
なぜこのカーボンと銀アクチュエータで、こっちは紙の上に樹脂を塗っていて、こっちは紙の上に導電性インクを塗ってという違いがあるかというと、印刷するときにすごい大切なこととして、印刷したインクの基板への乗りというのが大切で、この右の研究で紙の上に樹脂やって銀インクをやろうとすると、樹脂の上にこの銀印刷が乗らなくて、この銀インクが結構厄介で、これは用いている写真光沢紙なんですけど、紙でも平らできれいな表面の上じゃないと乗らないという。家庭用インクジェットプリンタに銀ナノ粒子インクを入れるために、ナノ粒子というすごい小さい状態にしているので、凸凹のある荒い面だとその粒子同士が離れてしまって、導電性を示さないというものがあって、樹脂の上だと銀インクが触れないんですね。だから紙の上に銀インクを塗ってポリウレタン樹脂を塗る。この研究で大切なのは、印刷の乗り性でどういう順番に印刷していく、なおかつどういう印刷法を使うことでいい特性を持ったアクチュエータをつくれるのかということを材料科学の面から検討しながら研究していくというのがこの研究の主な大切な趣旨の1つと思います。
最終的にこれを組み合わせたのがこちらのロボットで、先ほど申しましたが構造形成インクと、この銀インクが特定の紙にしか乗らないので、構造形成用の紙と配線形成用の紙の2種類を用いました。左のように切って右側のようなパターンを印刷します。
今回は4つのアクチュエータを同時に使用していまして、この右のような回路のこの紙の裏にある、見えないんですけれどもこの動画の中では。このような回路、銀インクで印刷した配線に対して電子部品を導電性着面につけて、4つのアクチュエータをマイクロコントローラーを使って制御しているというものになっています。配線とアクチュエータ導電層と構造形成は先ほども言ったとおり2万弱ぐらいのインクジェットプリンタで印刷しているというのがこのロボットの特徴で、もう一個構造形成法は、2枚用いるということにメリットがあって、さっきのハーバードのポリスチレンの紙回路基板で、5枚あれを貼り合わせるときにすごい丁寧に貼り合わせないと精度が悪くなってしまうんですけれども、貼り合わせることにもメリットがあって、この構造形成用の紙を用いることでほかの薄い、この場合は写真光沢紙を形成したんですけど、その紙を折れ曲げること、構造形成用紙の構造形成を利用して異なる性質を持つシート状材料の構造形成を利用しました。この手法を用いることでもっとほかに曲げたいシートがあれば曲げることができると思います。
これが実際にどういうふうにつくるかという動画です。まず切ります。右のような回路を書いてやると印刷してできる。銀が印刷されます。その上にアクチュエータとなる部分に樹脂をメイヤーロッドという転がして印刷する器具で印刷してやって、二つの構造形成用と回路用の紙を、この際に真ん中に穴を開けてうまくアライメントしています。構造形成用の紙に対して右のようなのを印刷してやると、あと放っておいたら紙を構造形成することができます。
電子部品を導電性接着剤で、この辺まで印刷するのが最終的目標です。それは難しいので、既存の電子部品を装填して、電圧をかけてやることでエネルギーを供給してロボットを作製する形となっています。
次が三つ目の立体紙回路基板です。立体回路基板を作成して開発して、この流れの中でなんですけれども、立体紙回路基板を開発してそれを駆動させたので、これまでの研究の欠点として先ほど申しましたが、2枚の紙を貼り合わせていることで紙が硬くなってしまうので、この手法の良さとして印刷した線に沿って紙がそこで反って折れ曲がる、なおかつ印刷線幅で折れる角度が制御できるということだったんですけど、それができずに変形の曲率が制限されてしまっていました。また、ちょっと先ほどから×16とかその倍速が見えていると思いますが、電気熱アクチュエータは熱拡散減少に起因する熱アクチュエータの応答性が良くないということがありましたので、まず上の問題点に関しましては、1枚の紙に対して銀インクを塗って、さらに構造形成用のインクを塗って、そうしたら放っておいたら折れ曲がる。銀は硬いから折れ曲がらないんじゃないかとか思われるのかもしれないですけど、インクジェットプリンタから印刷された銀は薄膜なのでこのようにフレキシブルな構造をとることができるということにものになっております。
また、熱アクチュエータに関しましては、MEMSでよく利用されている静電アクチュエータでスクラッチドライブアクチュエータというというものがあるんですけど、その静電接着を利用することで私は駆動させました。剥離、接着とありますがどういうことかというと、まず最初は剥離している状態です。こういう構造のロボットをつくるんですけど、このように剥離した状態から電圧をかけると後ろの部分が基板に対して接着するのでちょっと変形します。変形する際に後ろはくっつくんですけど前足がちょっと前に出る。その前に出た状態でまた電圧を切ってやると剥離して、ちょっと見づらいんですけど、この分だけ一歩前へ進む。これをうまく利用することで静電の原理で前に動く。後でどのように動くかを見ていただくことになると思いますが。
今回、立体回路というものの概念というのを取り入れたいなと思って、形状と電子回路も一体化されて軽量でコンパクトな回路をつくることができます。皆さんいわゆる回路を持つというと、PCBとかブレッドボードとか思い浮かべられますが、自動車とかの電子部品などで、よくMIDと呼ばれているんですけれども、Molded interconnect deviceという射出成型した樹脂に対してメッキを施すことで立体的な、構造に対して電子回路を付与している例とか、あとはこちらはVoxel8といってMulti-materialに導電性のインクも構造用のインクも詰め込んだ3Dプリンタをつくろうということで、このようにオレンジのような構造を作ってその中に電子部品を埋め込んでまた銀を印刷してやると、構造の中に電子部品を埋め込むことができるという、これは面白い技術です。
こっちがPCB origami、つまり構造に対してどのように回路を付与するかというのを考えた研究で、こっちは回路をどう折れ曲げるかというのを考えた研究で、折れる基板を作成した方たちは、こちらは手で構造形成していて、こちらは下は回路とは言えないのですが、その理由は折れ曲がる回路で印刷した線に反って折れ曲がるので、その印刷した線があると自分が駆動したい回路の邪魔をしてしまいます。確かに構造形成用の汎用性はあって回路のようなものとはなっているんですけど、それはどちらかというと構造形成に利用されていて、電子部品を動かすためには利用されていないということで、ただ、自動で折れ曲がる回路基板という意味では折れ曲がることに近いのかなと思いました。
そこで、我々は開発した紙の自動立体構造形成法を応用することで、勘弁・迅速な立体回路基板を作製できるのではないか。そもそも折れ曲がる基板があればその基板の上に電子部品を印刷して家庭用インクジェットプリンタで組み上がってくれればそれがロボットになるので、立体回路基板は基盤となる技術なのではないかと思います。インクジェット印刷で作製される立体紙回路基板というものを開発しました。
さっきとまた同じ流れなんですけど、1枚の紙の上に構造と配線を印刷するということと、先ほどの原理を利用して前に動く、静電アクチュエータを利用したロボットです。こちらは実際の折れ曲がる動画となっていまして、印刷した銀に対して光っているのが見えますので、金属光沢がある程度見えるんですけれども、それに対してこういう構造形成用のパターンを印刷してやると、その線に沿って紙は折れ曲がって丸まる。こっちは銀のパターンでこっちが構造のパターンなんですけど、ここにLEDを置いてここに電池を置いてやるとまずこのように光る。電気が通るのは当然のように見えますが、折れ曲げている間も電気導通が切れないというのが良い点で、このようになっています。なおかつ、銀があるところに対して構造形成用のインクを塗っても折れ曲がる角度はちょっと小さくはなるんですけど、ただ折れ曲がりが完全に阻害されることはない、導電性も阻害されない、それぞれのメリットは生かしたまま同時に印刷できるというものになっております。構造も非常にフレキシブルなものとなっていて、このように開いたり閉じたりしても導電性が消えることなく、導電性が保持されたまま。一瞬切れるのは回路と電子部品の接触が悪くなったときです。このようにぱちんと弾いても壊れない構造となっています。
今回、この技術を用いたことで、今まで変形の曲率が制限されていたものが、曲率が制限されず自由な変形をすることが可能になって、こちらのものはまず紙なので色も印刷できるので色を印刷した後に銀を印刷して、その後に構造をつくって印刷してやると、このように自発的に何も接着剤とかをつけることなく自発的に手首に巻きつくコイルのパターンがつくれて、このように立体紙回路基板は低コスト、軽量、フレキシブルで何かウェアラブルデバイスに展開できるのではないかと思っています。
また熱アクチュエータであったのを静電アクチュエータにすることで、これは等倍速で、いままでは倍速だったんですが、ある程度のスピードで動くものができまして、これは先ほども言ったとおり基板との接着と剥離を繰り返すんですけど、印刷手順としてはこの細長い紙に対して銀ナノ粒子インクを印刷してやって、その上に対して構造形成で、裏面と表面から印刷することで山折りと谷折りをつくってこのような形ができます。このような形を利用して先ほどの接着の原理を利用して動くと右のような変位と速度のグラフが取れまして、最大速度は大体8.94ミリメートル。あの丸い1円玉で3センチぐらい。そのスピードに対して割と速い。
そのアクチュエータの解析を行いまして、こちらはこのようなScratch Drive Actuatorを利用する際の模式図となっていて、1ステップの変位量が右側の式から得られるんですけれども、僕は今回はこの高さは10ミリを用いたんですけど、それで計算すると大体1ステップが9.5ミリと出てきて、それは今回の実験結果から得られる大体1ステップが36マイクロと違う値が得られます。こちらの研究者の研究の場合は小さいマイクロサイズで想定されていたので、静電エネルギーの影響が大きくなってしまっているため差異が出ました。実際、10ミリを4.1ミリに変えてやると39ミリと大体同じ値が出て、このアクチュエータが非常に高さに対して敏感な原理であるということがわかりました。
また駆動に必要な電圧は、左下の式で求められています。これによって右側の図のような構造の際に、どのぐらい電圧を加えたら紙を完全に引き込むことができるかという電圧がわかるんですけど、これはZipperアクチュエータのモデルです。それを利用して引き込みの電圧を計算してやると大体3,950V。今回用いたのは4kVで。3kVとかで試しても全然動かないんです。4kVで動いていたのは何でだろうと思っていたんですけれども、このモデルから類推すると、4kVではないと引き込まれないので動かないということがわかりました。
このような流れで今まで私は研究してきました。今後は、さらに右にも横にも縦にも広げたいな思っていて、制御部やエネルギーなどを印刷したり、構造や配線アクチュエータに対したりしても何かもっと新しい特性を付与できないのかなと考えています。
以上となります。ありがとうございました。
司会 ありがとうございました。僕は元々数学の人といいましょうか数値解析の人なんですけど、物がちゃんとこうなっていくような様子とかを見て未来を感じるような、ちょっと安っぽい表現かもしれませんけど、そういうのを感じました。今後も頑張ってください。
皆さまから何かコメント、質問などございませんか。
Q、細かいことなんですけれども、静電気で動くものは周波数はどのぐらいですか。大もとでずっと切り替えているわけですよね。
重宗 そうです。正弦波で100ヘルツとかですかね。電源から切り替えています。
Q、その周波数は、100ヘルツは何か最適化して100ヘルツが最適だったということで100ヘルツにしているんですか。
重宗 それを実際ちゃんと計算してやっている人たちはいるんですけど、僕はパラメータを振って経験的にやっただけです。実際は、周波数に対して速度がどうなるかというのは関係がわかっているので、周波数を振ることでどのような速度になったかというグラフを取ればよいのですが、やっていないのですみません。
Q、基本的な共振周波数みたいなものを合わせてあげると一番速くなるのかなと思って、その共振周波数を考えると、形そのものも何かまたいじる余地があるのかなというはちょっと思ったんです。
重宗 そうですね。形をいじることで何か方向とかも制御できたりして、そうですね、周波数によってという話ももしかしたらあるかもしれないですね。ありがとうございます。
Q、途中から聞いていたんですけど、どういうところに例えば持っていったら特に活躍できそうだとか、そういう話というのは何かあるんですか。宇宙とかに持っていったらすごくよさそうだなとか思いながら聞いていたんですけど。
重宗 そうですね、展開とか収納という意味ではすごい宇宙も興味があって、最初はロボットの教育キットで安価に簡単にロボットがつくれるというのを考えていたんですけど、雑誌の折り込みとかという話もあったんですけど、そうですね、宇宙は、さっき最初のほうにお見せしたんですけど、ハーバードのグループがやっているロボットは宇宙探査ということを論文の中でも触れていて、宇宙探査や極限環境に対して入り込んでいくロボットを大量生産するというときに使えるのではないかという話をしているので、そうですね折り紙というメリットを生かして、もしよろしければ何かできるといいなと思っています。
Q、衛星とかを広げるときにコンパクトに持っていって向こうでできるだけ広げてというのを結構考える人たちがたくさんいるみたいで、ともかくアクチュエータをどうやって向こうで効率的に動かすか、あるいは仕入れるかということをすごくたくさん困っていて、これはすごい活躍できそうなんじゃないのかと思ってずっと聞いていました。
重宗 ありがとうございます。今、折れ曲がるものは可逆的じゃないので一回折れてしまうと戻らないというのがあるので、そういうのが可逆的に何回も折れたり元に戻ったりできたらすごいおもしろいのかなとかも考えていて、僕は宇宙に関してどういう、多分いろいろすごい制約が厳しいと思うんですよ。多分、単純に安くて軽いから持っていけるというものではないので、そういう面で何かいろいろ議論できたらおもしろいなと思っています。よろしくお願いします。ありがとうございます。
Q、聞いていて、印刷をされた後にどういうふうにロボットができてくるかという過程から興味を持ったんですが、一個かなり気になったのが両面から印刷をして山折りと谷折りをつくるという話があったかと思うんでけれども、そもそも山折りを一回したやつをどうやってまたプリンタに入れるのかなと思って。すみません、あまりつまらないことなんですけど。
重宗 いや、それは大切なところです。そうなんです。これはいい点か悪い点か捉えるのが難しいところなんですけど、大体折れるのに15分ぐらいかかるんです。ということは急げば平らな状態のまま印刷したものをもう一回印刷できるんです。だから一回山折りのパターンを印刷したものを裏返して印刷すれば逆に印刷ができるので平らな状態で。折れるのが遅いというのはデメリットでもあり両面印刷ができるというメリットにもなると思います。もし両面から同時に印刷できるプリンタとかを使えばもちろん両面から印刷できるんですけれども、その場合多分値段が上がったりするので、この研究でこの手法の利点を使うという意味では遅いというのがあって、それができるようになっています。
Q、ちょっと気になったのが、一回曲げたのは無理やりインクジェットプリンタに入れたら入りますよね。
重宗 入れたことはないですね。
Q、ローラーで伸ばされながら、だからそこの同じところにまた印刷をもう一回してやったら、ちょっと曲がった状態のものがまた同じところにちゃんと精密に印刷できるんじゃないかと思って、そうしたら同じところにまた印刷されるから、ちょっと曲がった状態をまたローラーで伸ばしてしまうから、再現性は低くなってしまうかもしれないんですけど、2回同じところに印刷をしたら何かもっと曲げたりとか、2回同じところに印刷するとかそういうのもありかなと思いました。
重宗 ありがとうございます。実際、曲がった紙を入れたことなくて、挑戦するのが怖くてプリンタを壊すのが。でも確かにそれでもう一回印刷することで強度が、角度が曲がってきたので強度が上がったりとかというのは考えられそうなので。
Q、いろいろまだ、結構実はいじれるパラメーターが多そうだなと思いました。
重宗 そうですね。やってみてできましたというのが正直、今までで、最近ようやく数理的なことに興味を持ち出したので頑張ります。すみません。
司会 では、そろそろお時間になりますので、まだまだ細かい議論がたくさんあると思いますので、この後写真撮影などしながらまだまだお話しいただける時間はありますのでその後に。本日はありがとうございました。
重宗 ありがとうございました。
【研究紹介動画】