講演者:鶴田 直也(東京工科大学)
題 目:折り紙の数理と幾何形状設計
日 時:2015年10月9日(金) 18:00-
場 所:早稲田大学西早稲田キャンパス63号館 数学応用数理会議室(102号室)
オープニング
○司会 それでは、始めさせていただきます。数理人セミナーの9回目です。きょうは東京工科大の鶴田さんにお願いしました。とはいっても、僕がお願いしたんじゃなくて、筑波大学の二村さん経由でご紹介いただきました。ちょっと経歴をご紹介いただきたいと思います。
○二村 鶴田直也先生です。筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻、2015年3月卒業、学位を取られまして、2015年4月から東京工科大学メディア学部メディア学科の助手になられたということで、今は現職ということです。ご専門はコンピュータグラフィックス幾何形状処理。折り紙工学をご専門にされています。
今回、私が鶴田さんを紹介させていただいたきっかけなんですけども、これはかれこれ12年ぐらい前かな、豊田高専というところに僕と鶴田さんが行っていまして、学年は僕のほうが1つ上ということで、寮で同じ部屋で半年間生活したことがあります。部屋というのはランダムに決まるもので、もともと知り合いだったわけじゃなくて、偶然同じ部屋になりました。その高専の寮時代に思い出がありまして――ちょっと長くてすみません――彼の引き出しを勝手にあけたんです。そうしたら、中から折り紙の作品がいっぱい出てきてすごく驚きました。あと、「月刊おりがみ」という雑誌を定期購読されていまして、それを見ると折り紙の作品で最大でも――折る工程があるじゃないですか。それが200ぐらいまであるような折り紙の作品が載っていたりして、その当時ちょっと驚きました。それから時が流れ、私も彼も筑波大に1年ずれて編入しまして、そのまま博士課程まで行って学位を取ったという。彼が応用数理学会のほうへ出入りされていたので、今回ご紹介させていただいたという話です。
ありがとうございます。では、よろしくお願いいたします。
○司会 詳細なご紹介、ありがとうございました。
では、いつものように適宜質問が入るかもしれませんが、そういうのも許容していただくような形で……
○鶴田 ぜひインタラクティブに。
○司会 そうですね。どうぞよろしくお願いします。
講演
○鶴田 ご紹介にあずかりました鶴田です。今赤裸々な過去の話があったわけですが、ついこの間まで、3月まで筑波大のほうにいて、今は東京工科大学で助手をしています。
改めてちょっと自己紹介したいと思います。もう大体お話ししていただいたんですけど、用意しておいたので。
こんな感じでコンピュータグラフィックス、いわゆるCGで対話的に形を設計するためのソフトウエアをつくったり、その手法を考えたり、そういうことをしています。
どこに顔を出しているかというと、応用数理学会、3つ目のところに時々出ています。折り紙工学というセッションで、今明治大学に萩原先生という方がいらっしゃって、そちらから声がかかったりすると、何か出してくれということで顔を出したりしています。あとは、もう1個上は図学会で、図学会に参加している錯視の方も以前発表されていたようで、その方はどちらかというと近いほうですね。その辺ですね。
○質問者 図学会の「図」というのはどういう意味ですか。
○鶴田 図学なので、作図とかそういうところ。もちろん幅広くCGとかもやっていますけど、もともとはそういう図学を教えるという。作図法とかですね。
○質問者 「図学」という言葉があるんですね。そうか、失礼しました。
○鶴田 例えば、三面図から見て三面図を描くとか、CADとかの話も入ってきますし、多面体を描くとかそういう話とかもありますね。
あとは、折り紙の話が、順番が逆になりましたけど、折り紙の集まりと、一番下はグラフィックスのほうですね。コンピュータグラフィックス。最近はあまり顔を出すこともなくなっていますが。
○質問者 GCADというのは何ですか。
○鶴田 GCADは、グラフィックスとCADの略ですね。
今日、何か話を60分ということで、何を話そうかなと思っていたんですが、折り紙の研究の概説という感じで半分ぐらい話せたらなと思います。計算機で何で折り紙を扱うのかとか、そういうところですね。折り紙とCGの話だけではなくて、幅広いところ、折り紙研究の紹介とか、最近ニュースで挙がっているような話題ですね。そのあたりのトピックを紹介して、残り、僕の話は少しでいいかなと思うんですが、鶴田が博士課程とかでやってきたこと、その辺をちょっと紹介しようかなと思っています。
CG関係の方は多分いらっしゃらないと思うので、いわゆるコンピュータグラフィックスとCADとかの――さっきも話がありましたけど――話をすると、計算機で形をつくるということを基本的に僕はしているんですが、その中でも大きく分野というか種類を分けると、いわゆるコンピュータグラフィックスというのは、ディスプレイ上で見てオーケーならそれでいい。いわゆるCGのアニメーションとか映画とか、そういう映像用途が主な用途です。見えればオーケーということは、例えば裏側がどうなっていようと何でもよくて、もちろん現実にはあり得ないような物体でもモデリングできます。その一方で、いわゆるCAD、工業製品の設計とかに使うようなものの話をすると、これは現実の物体をモデリングするので、物理的な制約が必要になるというのは当然の話ですね。
○質問者 すみません、今の「モデリング」というのはどういう意味ですか。
○鶴田 モデリングというのは、形をつくるということですね。コンピューター上の立体形状というのは、いろんな表現手法がありますけど、いわゆる頂点と面の集合でできるんですけど、意図した形を頂点と面の組み合わせでつくるということを「モデリング」と言っています。
○質問者 それは二次元の世界でのお話なんですか。現実の物体をモデリングというのは、モデリングした後が二次元になっているという意味ですか。
○鶴田 いや、形を3Dに落とし込むということです。現実のものをコンピュータ上で3Dで再現するというふうに捉えてもらって構わないです。「モデリング」という言葉はいろんな意味があるので、今日の話ではコンピュータ上に三次元ないし二次元の形をつくる、形を何とかして取り込むとか、そういう話ですね。
計算機上で形を作るということは広く行われているんですけど、そこで何で折り紙が出てくるか、つまり紙の折り曲げで形をデザインすることを何で計算機でやるかということですが、手作業でやる手間を軽減したいという目的があります。これは折り紙に限った話じゃないですけど、実際につくるのは時間がかかるし、物も当然要るわけなので、そういう手間を減らしたいと。そのほか、例えば特殊な性質を持たせて、うまく平坦に折り畳めるように形状を修正するとか、折り線の位置を調整するとか、そういう話がありますね。試行錯誤の軽減のところにもありますけど、例えば折り畳み方がシミュレーションできたり、ちゃんと折れているかどうか判定するとか、そういう話もあります。
最近の――最近のでもないですね。計算機によって設計された折り紙というのが2000年ぐらいから徐々に出てきまして、例えば上段の左のほうですが、これも超複雑な折り紙の1つで、コンピュータ上で大まかな形を設計して、もちろん細部でデザイナーの意匠を凝らすというところは入ってくるんですけど、これも1枚の正方形の紙で、切り込みなしで折っています。
○質問者 ああ、それはすごい。すばらしいと思います。右なんて正方形から……
○鶴田 これも全部そうですね。これはいわゆる折り紙の作品なんですけど、例えば真ん中の、これは東大の舘先生が考案されたんですけど、上のほうに小さくあるウサギのモデル。これは、スタンフォードバニーというCGの分野でよく使われるサンプルの、テンプレートのモデルなんですけど、これもさっき言ったように頂点と三角形の面の集合でできています。これを折り紙で、1枚の紙で折ろうということで、これ、図が潰れちゃって、拡大しても大体潰れているんですけど、三角形のメッシュを、紙にうまくひだをつくってメッシュを表現するという手法です。ここ、ちょっと細かくて見づらいんですけど、全部三角形の集合でできていて、その三角形の間に紙がぐちゃっと折り込まれていると。そういう折り込みの部分をつけ加えてやることで、1枚の紙から折れるということですね。
○質問者 紙は普通の紙なんですか。特殊な、こういうのをつくりやすい紙とかでつくっているんですか。
○鶴田 紙は、もちろんサイズが大きいというのがまず1つ。いわゆる折り紙というのは、今日も持って来ていますけど、こんな15センチ四方のですね。もっとでかくないとそもそも折れないものもあります。当然画用紙みたいな厚いのだと膨れてしまうし、厚みの部分で折れなくなるので、薄い紙ということですね。そういうこだわりはありますね。
○質問者 こういう折り紙の研究でやっている折り紙の定義は、さっきの正方形からスタートして切り込みなしというのがほぼ定義ですか。
○鶴田 定義の話、もうちょっと後に出てくるんですけど、正方形とは限らないです。もっと言うと、紙かどうかもあまり限ってはいないです。材質が、要するにもっとかたい金属板とか、そういうのですね。
○質問者 曲線はありなんですか。
○鶴田 曲線はありですね。ただ、曲線が入るのは、割とやっている人も違ったりして、また、取り扱いも……
○質問者 何か曲線は定義しづらい気がするんですけど。
○鶴田 ああ、そうですね。
○質問者 線で折るというのはイメージできるけど、曲線を折るとか、こういうカーブをつけるというのは、設計としてそれはありという。
○鶴田 ありですね。紙を曲げたり。今話が出た曲線折りの、一番右のやつは筑波大の三谷先生、僕の先生でもあるんですけど、曲線でこういう球体の折り紙をつくるというものです。これは正方形ではないですね。これは横長の長方形の紙をくるっと1周回して、またこれもひだみたいな部分をつけるとうまく丸っこくなります。
○質問者 ちょっと待ってください。そのザリガニは正方形なんですか。
○鶴田 これは正方形です。これは、これが展開図ですね。必要な部分はここの部分だけなんですけど、正方形の中におさまってはいるんですが、余りの部分は後ろ側に押し込んでしまえば関係ないので。
○質問者 ザリガニの足はそんな簡単にできるんですか。
○鶴田 そんな簡単にというのは難しいですけど。
○質問者 いや、あれを開いたらちゃんと展開図になるんですか。
○鶴田 正方形におさまりますね。
○質問者 それはすごい。
○鶴田 また後で時間があるときに、展開図が出ているのもあるので、そういうのもちょっと紹介しようかなと思います。
上は、基本的には折り紙の作品ということで、そこからどうつながるかというと、作品として満足するとか、意匠のデザインに応用するとか、例えばパッケージとかはありますけど、そうではなくて、もう少し工学的な話をすると、エアバッグのシミュレーションとか、こういうのも折り畳みが関係しています。ふだん小さく折り畳んであって、緊急時に素早くちゃんと広がってくれないといけない。その折り畳みをシミュレーションするというわけです。
一番有名な例は、下段、真ん中のやつですね。太陽光のソーラーパネルです。三浦公亮先生がつくったものですけど、これも非常に巨大なサイズなので、そのままスペースシャトルに積むわけにはいかない。宇宙で組み立てるわけにもいかないので、小さく折り畳んでおいて、少ない力でうまく広がってほしいということですね。
下段の右は、上のやつと似ているんですけど、これはまさに三谷先生がソフトウエアを開発して、それをイッセイミヤケという服のデザイナーの方に提供して使ってもらって、そのデザインを、服もふだんは折り畳んでおくもので、その折り畳み方にちょっと工夫を凝らしたものですね。折り紙と、そういうふだんのものづくりのコラボレーションの例として挙げております。
ちょっと話を戻すと、折り紙をなぜ形状設計で扱うかというのは、まず形状設計の中でも非常に難しい問題であるということが挙げられます。つまり、CGというのは、最初に言ったように何でも作れてしまう。ディスプレイ上で見てオーケーなら何でもいいというのがCG。CADというのは現実にあり得るもの、ものづくりの話なので、例えばドラゴンとか、あるいは内部がぐちゃぐちゃになっているものとか、そういうものはだめですよというのがCADですね。あるいは、中空に浮いているようなものは当然CADではあり得ないわけです。
いきなりペーパークラフトが出てきましたけど、紙を使ったものづくり、形をつくるということでペーパークラフトを挙げています。もちろん皆さんも楽しんだことが、1回はやったことがあると思うんですけど、これは複数のパーツをつなげて立体的な形をつくるもので、割と自由度が高いですね。要するに、やろうと思えば何でもできてしまうということですね。例えば、段ボールでガンダムをつくるみたいな話がありますが、それみたいにどんな形でも割と柔軟につくれると。パーツを分けてしまえばですね。
○質問者 ペーパークラフトでできなくて、CADでできるというのはどういうものがあるんですか。
○鶴田 紙でつくっているので、素材的な問題と考えてもらったほうがいいかもしれないですね。CADというのは、いわゆる一般的なものづくり。素材は何でもいい。例えばプラスチックでも何でもいい。中が詰まっているようなものでも何でもいいですけど。
○質問者 でも、同じ形状をつくる場合だけなら、CADで可能なら全部ペーパークラフトで、サイズと強度にこだわらなければ何でもできそうな気がするんですが。
○鶴田 そうですね。確かにおっしゃるとおりです。ほとんど変わらないと言ってもよくて、実際に工業製品を、例えば3Dプリンターとかでラピッドプロトタイピング、要するに試作品をぱっぱとつくりたいなという需要があって、そういうときにペーパークラフトで、紙でつくっちゃったら早いんじゃないかみたいな、そういう話もあるので、おっしゃるとおり、これだと小さく見えますけど、ほとんど変わらない(*)と捉えてもらって構いません。
話を戻すと、折り紙はペーパークラフトよりももう少し狭い話になりますね。ただ、ここでは定義しないので、また後ほど定義しようと思っています。
*補足: 離散化の問題もあります。例えば球を紙で作ろうとするとある程度のサイズのパッチに分割しなければなりません。切削加工(鋳造)でもデジタルでやる分には離散化が必要ですが、ペーパークラフトよりは細かく作れます。
どんな形がそもそもできるかというのも、実はあまりわかっていないところもあります。特にさっきおっしゃった曲線の話というのは比較的新しい話題で、じゃあ、実際もっと自由なデザインがどうやったらできるかとか、どんな形ができるかとか、その辺は今も研究されています。おもしろい形が見つかったらいいねということで。何か新しい形がコンピューターを使うことで見つけられないか、もっと対話的に設計することで意図しない形が、ふだん紙を折っているだけでは見つからないようなものが見つからないかと。
今言ったのは形状設計の話なんですけど、もうちょっと折り紙の話をすると、下へ一次元、二次元、三次元とありますけど、一般的に折り紙作品というのは、基本的には平面のものとして捉えられます。これ、鶴は最後に羽を広げて立体になると言われるんですけど、それは最後の意匠設計の段階で、基本的には全部これフラットな手順です。折り畳み手順は1回1回、まあ、折る途中は当然立体的になりますけど、フラットに折って、またフラットに折って、全部2Dで話が進んでいく。
それと似たような話で、こういうテッセレーションといってパターンを敷き詰める、平面充填するパターンですね。こういうのも折り紙の1つのジャンルとしてアーティストがいます。ある人は、テッセレーションという敷き詰めパターンの折り紙アーティストであると。設計のソフトウエアもありますので、こういうのも1つあるということで紹介しておきます。
じゃあ、一次元は何かというと、一次元の折り紙というと、これは具体的に設計という話ではないんですけど、例えば1つ例として挙がっているのは、細長いずっと無限長の紙が、有限でもいいんですけど、それに一定間隔で山谷の折り目を入れる。そうすると、紙の重なり順は何パターンありますか、みたいな話ですね。そういう計算量とかオーダーの話、パターンの組み合わせの話とかが出てきますね。
大分それから外れるんですけど、DNAの折り紙というものもあります。「折り紙」でグーグルスカラーなりで検索すると、意外とプロテイン・フォールディングとかたんぱく質の折り畳みとかいうのがヒットするんですね。これは何かというと、僕の専門ではないのであれですけど、DNAが小さく折り畳まれていて、その折り畳み方をうまく考えてやると、これもひもがずっと曲がってうねうねになっているんですけど、意図した形が作れると、そういうものがあります。ただ、直接的には折り紙とはあまり関係ないんですが、海外の人は何でも折ってあれば「折り紙」とつけるという傾向が割とあるので、何でも、これは折れているから折り紙だというような感じで、たんぱく質の折り畳みとか、そういう話があります。
立体的な形状というのは、先ほどもごらんいただいた、曲線を折ると絶対に立体になってしまい、平坦には折り畳めないので、そういうものが該当します。
右下の写真ですが、デービット・ハフマンというコンピューター、計算科学、数学とかで有名な方なんですけど、ちょっと年代は忘れましたけど、1900年の何年ごろだろう、当時数学的な考え方でやっていて、2000年代になってからやっとコンピューター上でこういう形状を再現するための仕組みが整ったというような感じで、数学的なモデルをうまく計算機中に取り込むには結構時間がかかったというような話があります。計算機上で再現するということですね。3Dスキャンとかしちゃえば話は早いんですけど、そうすると、例えばノイズが乗ったり、厳密には平坦な形には再構築できなかったりするので、その辺の話がCG界隈で話題になったこともあります。
これも立体的な話ですけど、またちょっと外れて、ユニット折り紙というくす玉みたいなものも「折り紙」という名前がつきますね。ただ、これは複数の紙を組み合わせてつくるものなので、あまり研究の対象にはなっていません。ただ、折り紙のアーティスト、愛好家の方からはすごく好まれていて、もちろん折り紙の本とかは何冊も、このユニット折り紙というテーマだけで幾つも作品があるし、本も出ています。
右上が今一番ホットな、後でニュースも取り上げますけど、剛体折りというものですね。これはちょっと見ていただくのが早いので(*)。これは海外の大学のものですけど、剛体折りのメカニズムの動画です。剛体折りというのは、今この折り紙の形が4枚の板でつながっている、この板の部分だけは動かない固いパネルと考えて、それが折り線の部分でヒンジでつながっていると考える。それが剛体折り紙です。
これがヒンジでつながっている状態。このヒンジとヒンジをつないでいるものは非常にかたいので、そこの部分はゆがまない、曲がらないということですね。そのヒンジの部分だけ取り出すと、これが折り紙の構造、メカニズムですね。こうやって考えると、現実に物をつくるときには紙なんかではなくて、もちろん金属板とかでつくるんですけど、そういうときに折り紙のメカニズムが使えるということですね。
先ほどの説明とは違ってまたちょっとこんがらがってしまうかもしれないんですけど、折り紙といってもその構造、メカニズムに着目していて、素材自体は紙ではなくて金属とか合板を使ったりすることもあり得ると。しかもそれらは、当然パーツが離れていて、ヒンジの部分のパーツも別に用意しなきゃいけないし、つなげなきゃいけない。なので、一口に折り紙といっても、厳密に、例えば紙をそもそも使わずに金属のものを使うということもあり得るということですね。
*参考動画: Origami spherical mechanism http://www.youtube.com/watch?v=oLuO_-CPJXk
さらにいうと、これも最近の研究で、2014年の秋ぐらいだと思うんですけど、これも折り紙です。折り工程のみでつくると書いてあるんですが、何をしているかというと、切り込みを入れて、それをうまく持ち上げてやると、こういうハニカム構造という、この中が六角形で全部空洞になっているものができます。段ボールみたいなものを考えてもらえばいいんですけど、非常に丈夫になります。これは切り込みが入っているので、これは折り紙なのかというと、あまり厳密には議論されていませんけど、これも1つの折り紙研究でしょう。
○質問者 これは1枚の板、紙か何かでつくるんですか。
○鶴田 こういうシートに、スリットというのは切り込みですね。図ではちょっと線の区別はつかないかもしれないんですけど、切り込みと山折り・谷折りの位置をうまく決めてやると、その後は単純な折り工程だけで写真のようなものができるということですね。なので、非常につくりやすいという。もうちょっと説明すると、従来のやつは複数の板を接着する。左側の図が1枚の板がたくさんあって、真ん中の部分だけ接着する。そうすると、広げたときに同じものができるけど、このやり方だと面倒くさいので、うまく切り込みを入れることと折り方を工夫することで対応しようというような話ですね。
○質問者 そうすると、何か緩衝材とか丈夫な材質ができるということですね。
○鶴田 そういうことですね。
○質問者 使っている表面積は同じなんですか。もとの素材があったとしたら、その素材の分量は同じなんですか、左と右で。
○鶴田 分量は、張り合わせの部分が多分微妙に違ってくるのかな。そうですね。違ってくると思います。
○質問者 それは、折り紙のほうが効率がよかったりするかもしれないんですか。
○鶴田 効率は、素材の量のことまでは調べていないのでお答えできないんですけど、単純に製作工程がまず楽になると。それが大きなメリットであると。
○質問者 それはすごく大きなメリットですよね。
○鶴田 厳密には折り紙の定義というのは誰かがしたわけではないので、とりあえず今回の僕の発表の中でいうと、いわゆる古典的な折り紙、これは切り込みなしの正方形のやつですね。切り込みありのものというと、こういうのとか、ポップアップカードみたいなものですね。「折り紙建築」という単語でやるとこういうのが検索されたりします。ポップアップカードとか紙工作―― 一番右はペーパークラフトですけど――までいくと、複数の紙が糊なり何なりで張りついているので、複数部品の接着があるということになります。どこまでが折り紙かというと、今回はのりづけはなし、ペーパークラフトは含まないとします。要するに、素材は1つだけです。ただ、切り込みはオーケーにします。まだこれはあまり議論されていないので、もしかしたら切り込みだけで何か新しいグループができるかもしれないですし、それはわからないですけど、今のところは折り紙の中に一括で大体入っているので、これも含めて、要するにここまでですね。切り込みまではオーケー。素材をいっぱいくっつけるのはなしにしようかというところに落としどころを設けておきます。
今ざっと説明したので、あと少しだけ最近の話題を紹介しようかなと思います。ニュースサイトから持ってきただけなんですけど、これは東大の舘先生がやっていたもので、二方向平坦折り可能な構造ということで、剛体折り紙の話ですね。何をやっているかわかりにくいかもしれないんですけど、これ自体は円筒形の筒状の形になっています。筒状の形なんですけど、それが筒の軸方向と筒をたたき潰す方向に平坦に折り畳めるという。その筒状のものをいっぱいうまくかみ合わせてより頑丈な構造にできるということで、超頑丈で伸縮……まあ、日本語で書くとちょっと誇張しているところもあるんですけど、建築物とか、先ほど言ったような丈夫なものとかに応用できるかなというような期待がされています。
こういう、さっき見せたような剛体折り紙というのは建築方面の利用が多くて、例えば災害時の避難用シェルターとか、それもふだんは折り畳んでおいて、ぱっと誰でも広げることができて、しかもある程度の丈夫さがあるというようなもので、海外でも幾つかそういう事例が出ています。
あとは、これは明治大学の萩原先生のところですね。これはトラスコアパネルで、先ほどお見せしたのとはちょっと違いますけど丈夫な構造の話。服の話とか、こういうハニカムコアパネルの応用があるということで、ニュースサイトから抜粋しました。
というわけで、ざっとですけど、折り紙の世界の紹介は終わりにして、あと、簡単に鶴田がやってきたことを紹介していこうかなと思います。
これは主に修士、継続的にもやっているんですけど、折り畳みパターンの列挙というのをやっていました。さっきの一次元、二次元、三次元と紹介したところでも出したんですけど、折り畳み方のパターンを数え上げるというのを割とやっている人がいます。一次元のやつはスタンプフォールディングとか、二次元のやつはマップフォールディングとか呼ばれるんですけど、この辺の話は割愛していくとして、平坦に折り畳めるかどうかをうまく判定するとか、山谷の折り線の組み合わせを考えるとか、そういう問題があります。
僕が前にやっていたのは、折り畳み形状の列挙というものです。紙を折る操作や折る回数を制限することで、4回以下の折りで可能な形状を列挙しました。例えば最初に折り紙を1枚渡して、さあ、1回折ってくださいというと、大体三角形に折るか長方形に折るかで、中には適当に折る方がいらっしゃるかもしれないんですけど、こういう折り方に大体決まっています。なぜかというと、それは、カドとカドを合わせるとか、フチとフチを合わせる、そういう目印があるからなんですね。そういう目印のあることだけに注目すると、じゃあ、その目印を全部使ったときに、この組み合わせとこの組み合わせ、この角とこの角を合わせるとか、そういったことを組合せが有限個におさまるので、それで何回か折った形を出してみようということをやっていました。
後でもう一回紹介しますけど、そのカドとか辺とかを使った折り方というのは、折り紙の公理としてまとまっています。その中でもこの3つの折り方を使います。2点を通るように折るというのは目印を、紙のカドとか折り線が交差しているところとかを任意に2個選んで、それを通る直線を引っ張るということです。そうすると、ある状態では任意の2点を通る直線というのが幾つか引けて、有限個に定まる。同じように2点を重ねるような折り方もありますね。中学校の数学で出たような垂直二等分線を求めるとかいう話になるんですけど、これもやっぱり2個選んで垂直二等分線を求めるといろんな線が出てくると。最後のは角の二等分線ですね。平行の場合は別ですけど、フチとフチを合わせると、一般的には角の二等分線になります。
公理のスライドもあるのですが、飛ばしますね。
これも全パターンを求めるとどうなるかというと、1回折ったときのパターンは、さっき言ったとおり三角形か長方形になる。折り目をつけるという操作もこれは含めていますので、線が入っているのは1回折って開いた状態です。これを1回とするかどうかというのはちょっと疑問があると思うんですけど、これも1回としています。2回折るとこのような形。見ていただくと、例えばこれなんかはすぐわかりますよね。ここのカドとここのカドを合わせて折るとこうなると。折り目をつけただけのものは置いておいて、これは三角形のカドの部分ですね。二等辺三角形のところ。
○質問者 それで今2回折ると、これで全部なんですか。
○鶴田 そうですね。さっき指定した折り方だけ使うとこれだけになります。折り方を増やせばもちろんもっと増えますけど。これで1,500個ぐらいですかね。
○質問者 これで全部だというのは、数学的にこれを証明したんですか。
○鶴田 これは全部プログラムでやっていますので、その頂点の――折り紙というのは、コンピュータ上で頂点と面のリンク情報であらわされているので、その組合せを全部引っ張ってくるだけです。あとはコンビネーションの問題ですよね。ただ、もう少し詳しい話をすると、重複が出てきたりするときのその重複の判断とか、紙が重なってくるとどんどんそれが増えていくんですけど、その辺の話は定義によります。なので、ぱっと説明するのは難しいですが、基本的には全部と考えてもらっていいです。
○質問者 順序は違うけど最終結果が同じ形というのは、当然別のものとして含まれているわけですよね。
○鶴田 これはどうだったかな。重複を除く処理はしていたんですけど、その重複の除き方というのがあるので。
○質問者 点対称、裏返しは全部除くと。
○鶴田 除いていますね。
○質問者 順番が違うだけ。
○質問者 2回のやつで、縦を折って横を折ってというのを、横を折って縦を折ってが一緒だろうかということ。
○質問者 そうそう、そういう感じ。
○質問者 ああ、それは回転か。
○鶴田 1回目のやつはこれなので、だから、回転は除かれていますよね。
○質問者 ああ、そうか。だから、山折り・谷折りが逆になっていても、それはそういうものとして……
○質問者 ということもそうだし、さっきの公理を使う順番かな、それは全部除かれているのかな。
○鶴田 最終結果だけで判断していますね。最終的な折り上がり方ですね。
○質問者 全部開いて回転したり裏返しにして、同じだったらそれはもう同じものとして……
○鶴田 同じものになっているはずですね。
○質問者 じゃあ、かなり多いな。そうか。
○鶴田 レイヤーの話で、どんどん重なっていってしまうので、そこが……。これが一番いい例かもしれないですけど、1枚これを開くのと2枚折るのと、それを単純に考えると、1回折ると紙の層が2倍になって、2回折ると4倍になる。2倍、2倍でどんどん紙の形によってふえていくので。
○質問者 そうか、それも含むわけか。
○鶴田 どれぐらいのオーダーでふえていくかというのは、厳密な推定はこれもされていないですけど、単純にいうと2倍、2倍でふえていくので、そういう量ですね。
152ページでさっきの、13万ぐらい(*)だったかな。ちょっと記憶が曖昧ですけど、ここまでやると、これをやってどうするかというと、これを見るだけでも割とおもしろいんですけど、例えば……
○質問者 これを全部並べちゃったということは、あの公理に従い、4回折ってつくれる折り紙は全部つくってしまったと。
○鶴田 そういうことです。だから……
○質問者 誰もこれ以上もう……
○質問者 何も新しいものは出てこないと。
○質問者 新作を主張できないということですね。
○質問者 主張できない。
○鶴田 例えば、この辺とか何かの形に見えませんか。鳥みたいな形。回転させてみると。折り紙の作品、いわゆる芸術作品として見れば、名前をつけちゃえば、これは、じゃあ、鳥ですと。他のもご自由に名前をつけていただいても構わないんですけど、そういった作品の発見とかにも多少は使えるだろうと考えています。もしかしたら、例えば動物の顔に見えるものもあるかもしれないし、いろいろ見つかるかもしれないです。さっき言ったように全部数え上げているので、人が手で折ってどこかで折り逃しするということは絶対ないので、そういうところで、最初に言ったように新しい折り方を見つけることができるかなという話です。これはここまでにしておきます。
*PDFファイル参照: http://grusfield.com/tsuruta/origami/lists/
数学っぽい話をしていないので、次はちょっとだけ数学っぽい話をしようかなと思います。
話はがらっと変わって、今度は立体的な形状の話で、しかも切り込みも入っていますので、かなり折り紙というには怪しいところもあるんですけど、折り紙の話として捉えていただけるといいですね。
この辺はものづくりの話で、さっき言ったように平板素材でつくると素材の無駄がなかったり、うれしいですよということで、上のやつはもう実際に販売されているような椅子なんですけど、こういうものがあります。
○質問者 椅子?
○鶴田 椅子。これ、折り畳まれていて、「フラックスチェア」とかで検索すると出てくるんですけど、1万円とかその辺の値段で売っていますね。ただ、当然設計の自由度は低いです。1枚のつながった素材、厳密にはつながっていなくても、1枚の状態になっているので、形の自由度が非常に低いということで、それを何とかしたいねという話があります。
単純な直線で区切った折り曲げだけだと当然できあがる形が限定されてしまうので、いわゆる曲線的な折り方というのが登場してくるわけですけど、その曲線で折った形をコンピュータ上で表現する手法があります。曲面で、かつ平面に展開できるような面を可展面といいます。展開することが可能な面ですね。その可展面をうまくコンピュータ上で実現するためのシステム、あるいは、設計する方法がいろいろとあります。
少し具体的な中身の話になると、1つの表現手法として平面の四角形のメッシュによって可展面を離散的に表現するというものがあります。つまり、何を言っているかというと、これが平面の四辺形ですね。四角形というのは、三次元空間で考えて4点とると、平面になるかどうかわからないですけど、4点が同一平面上に乗っているとします。そして、これがどんどんつながっている状態です。これを折り目と考えてもらえると、帯をくくっと折り曲げていったものと考えてもらえるといいと思います。こういった表現で細分割をしていくと、離散的ですが滑らかな曲面が表現できます。十分に細かくしていけば、いわゆる現実の紙の折り曲げと変わらずに取り扱うことができるということですね。右のは複数の板がつながっているんですけど、実際の建築物でもこういった帯状のものを曲げて並べてつくるというようなことがあります。なので、まず重要なのは、後でも出てきますけど、四辺形の集合でこういう折れ曲がった長い部分を表現するということです。
もう少しこれは細かい説明がありましたね。いきなり数学っぽい話になりましたけど、繰り返しになりますけど、1個の四辺形の頂点が同一平面上に乗っていなきゃいけない。ここで問題なのが、コンピュータ上だと同一平面上に乗るというのはかなり特殊な条件なので、ちょっと頂点を動かすだけですぐ変な形が出てしまいます。なので、それをうまく制御するために、対角の頂点をつないだ線の距離、これは三次元的な意味の距離ですけど、こういう線とこういう線、4点とって距離がゼロになっていれば同一平面上に乗っていると判断します。そのような条件を設定して、それを満たすようにうまく各頂点を微調整しながら、反復計算で求めるというような手法が提案されていました。
○質問者 線分の距離がゼロ。
○鶴田 この図だと平面になっていますけど、この4つの頂点が同一平面上に乗っていない場合を考えると、線分も当然同一平面上に乗っていないのでねじれているような形になります。
○質問者 ああ、なるほど。
○鶴田 そういう意味です。ねじれているので、そのねじれをなくすというか、ねじれた線分同士がくっついていれば、オーケーということです。
○質問者 それをコンピュータで計算するんですか。
○鶴田 そうですね。これがエラー関数みたいなものになっていまして、距離が最小にするために、頂点をちょっと動かしてエラー関数を計算して、減っていたらこのエラー関数の勾配を求めて、その方向にどんどん頂点を動かしていく。反復して十分に小さくなればいいということですね。距離が十分に小さい状態の頂点の位置を求める。
これと同じような話で、僕がやっていたのは、これは開発したソフトなんですけど、こういった曲がった形状を設計するためのソフトウェアをつくりました。この青いものがデザインした部分です。
こういった長方形の板に平行にスリットが入っている素材を想定します。この素材をうまく曲げてやると、右のような椅子みたいな形ができますね。ただ、それをコンピュータ上でうまく設計するのは非常に難しいので、そのためのソフトウェアをつくりましょう、ということをやっていました。これを、例えば普通のCGのモデリングのソフトとかでやってしまうと、あり得ない形状ができてしまったり、平面に展開できなかったり、そういうことが起こります。
簡単に、ちょっと飛ばし飛ばし見てもらうと、今この状態で、ここの部分で90度に折れ曲がっていると。台みたいな形をしているということですね。この状態からユーザがこの辺のパラメータとかを操作していくと、自動的に曲がった形状が計算される。つまり、どこか1カ所の操作だけで全体が連動して変形していくということですね。常に1回操作するごとに頂点の微修正を自動的に行っているので、平面に展開できる状態が保たれます。平面の素材からつくられる状態が保たれている。ただ、コンピュータ上で頂点の位置を修正してしまうので、思ったように動かなかったり、そういうところは多少あるんですが、頑張ってやるとこういう椅子のようなモデルができます。
あと、中身の話をちょっとしていくんですが、細かい話は少し置いておいて、さっきと同じ素材の話ですね。ここが土台の部分、側面の部分で、そこから帯が何本も伸びています。
帯状の部分というのは、折り目の位置と角度で立体的な形状が定義される。なので、ある位置で折って折って、最終的に折っていった後の終端のところが、全体を左右対称としているので、対称の面上にぴたっと乗ってくれれば、あとは反対側をつくってやればつながっているものができます。
でも、適当に折り目の位置を決めてしまうと、当然ぐにゃぐにゃ曲がっていってあらぬ方向に行って、反対側をコピーしてもすき間ができたり、重なってしまったりしてしまいます。
○質問者 これ、1つ1つは全部長方形ですか。それとも台形というか……
○鶴田 台形ですね。だから、これがこうなったりしますね。折り目の位置がずれていくので。
○質問者 ああ、台形なんだ。
○鶴田 台形にならないと、背もたれの部分のようなところは表現できないので。
○質問者 それはかなり自由度があるような気がするんだけど、そんなことないか。パラメーターの数が多いなと思ったんだけど、そんなことないのか。
○質問者 めっちゃ多いね。
○質問者 めっちゃ多いよね。
○鶴田 今回はこの平面の状態で、実装の仕方はいろいろあると思うんですけど、1つの折り線につき2頂点と角度で3、あと折り目の数が、粗い状態からもっと細分化していきますけど、掛けたものが帯あたりの数ですね。3パラメーター×折り線の数×帯状の部分の数と。
○質問者 これは、具体的に計算していったときに、どっちから計算していくのかも全然わからないけど、どれが大変ですか。やっぱり1つの、さっき定義していた対角の距離がゼロにならないということが頻繁に起こるということなんですか。
○鶴田 どれがというと、ちょっと難しいですね。
○質問者 あ、ごめんなさい。ちょっと抽象的な質問で。
○質問者 計算負荷は大したことはないんですか。
○鶴田 そうですね。計算負荷的にはそんなに大変なことはないですね。ただ、ある程度対話的にはやりたいので、その辺の意味で……。
○質問者 パラメーターに重力はかかっていないんですよね。
○鶴田 重力はかかっていないです。厚みとかその辺も。最後に言いわけしようかなと思っていたんですけど、簡単に形だけと考えてください。
○質問者 何か計算幾何の関係、杉原厚吉先生が言っている、ああいうのは関係あるんですか。誤探しでそういう幾何の計算をするんですよね、コンピュータ上で。何か昔やっていたと思うんですけど、あれだと、さっきガウス・ニュートン、丸め誤差があって、きっと最後にぴったり合わないことがありますよね。
○鶴田 合わないことはあります。厳密にはあります。
○質問者 幾何計算を使うとぴったり合う理論があって……
○鶴田 それ、適用できるのかな。ちょっと後でその話をしましょう。
今ちょっと話が出たんですけど、エラーももちろん含みますし、今つくっているのは形だけで、重力とか、その辺は判断していないです。今言った、素材の位置の拘束、最終的に終端、対称面上に乗っていなきゃいけないよというのに加えて、あとは、なるべく滑らかに曲がってくださいねとか、四辺形の縮退というのは、四辺形が潰れてしまう、頂点が非常に近くなってしまうとよくないことが起こるので、それを除くような項とか、あとは、対話的に操作したいのでユーザ指定の位置になるべく近づける項。それぞれ全部正の値になるようなエラー関数を定義しておいて、でうまく調整するという仕組みです。ただ、ユーザーがここにやってほしいといっても、現実にはあり得ないところもあるので、その辺はバランスの話になってきますね。
○質問者 その対話的にやるというのは、先ほどの……
○鶴田 この辺に来てほしいとか、頂点をちょっと動かしてみたいなと。
○質問者 それは真ん中を操作するのか、それとも、その端っこも。だから、もう全部。入力は一体何なんだろうなと。
○鶴田 ユーザーが操作できる部分は、側面の形と、各折り目の頂点の三次元の位置も操作できます。
○質問者 じゃあ、もう全部できるわけだ。
○鶴田 そうですね。ただ、例えばこの折り目というか、その位置をもう少し下にしてほしいといっても、それを満たすような形があるかどうかというと、それは当然ユーザにもわからないので、もしかしたら動かないかもしれない。
ばーっと飛ばしていきますが、行列の話はどこかにあったかな、結局どうやって最適解するかという話が載っていないですね。いつも大体割愛して話しているので。
それぞれ正の値が出てきて、関数自体も全体として正の値になるんですけど、ある頂点の位置、折り線の位置をちょっと動かすと、そのエラー関数の値が当然変動して、プラスになるかマイナスになるかわかりませんけど、もとの値とで数値微分をとる。そうすると、この関数の傾きが求まって、低い方向に頂点をそれぞれ動かしていく。なので、局所解ももちろんあって、どこか変な状態で止まっちゃって、ユーザーの指定する位置に動かないとか、そういうこともあり得ます。実は関数的に離れた位置にもっといい形があるけど、それに達しないとか、そういうことも起こり得ます。
○質問者 やっぱりインタラクティブな入力って結構難しいよね。条件がすごくたくさんついてくるということなのかしら。最初はまずこうで、わからないけど、椅子のちょうどど真ん中のところの高さをこうしました。次に何か違う条件を課したら、もとのやつは固定したままということなんだよね。
○鶴田 維持されます。
○質問者 維持されますよね。
○質問者 厳密に維持したら動かないでしょう。
○鶴田 厳密にはもちろん維持されない。だから、同時に考慮されます。例えば、中央の部分になるべく近くして、新しく追加したものにもなるべく近くするのに……
○質問者 なるべく近くするということで。
○鶴田 そういうことですね。
○質問者 どんどんふやしていって、ユーザがこんな形というのを指示すると。
○鶴田 あるいは、途中で条件を外したり。
○質問者 じゃあ、どこか頂点を動かしていくと、必ずしも持っていった先の終わりまで動くとは限らないということですね。
○鶴田 そのとおりです。
○質問者 現状は、だから、1枚の平板からつくるということが最優先と。
○鶴田 最優先。なので、この中でも思い切り係数が重くなっているのは……。少なくとも絶対満たさなきゃいけない条件というのはあります。今言ったことをちょっと補足すると、局所解とかも当然あるので、どの順番で操作したか、どこを最初につくったかというのも当然聞いてきます。
ぼちぼち終わりに近づいていますけど、いきなり細かいのでやっちゃうと当然、さっき言ったように行列のサイズが大きくなっちゃうので、粗い状態からやっていってどんどん細分割していきます。なるべく滑らかに、要するに詳細な修正ができるようにしていくという形ですね。
この辺はざっと、あ、これがいいですかね。これは半分だけ示していますけど、点線が斜めになっている。これが計算で求めた折り目の位置ですね。この部分は折り目が急になっていると思いますけど、こういう部分ですかね、背もたれの部分というのは斜めに折らないといけないので、折り目の角度がついてきちゃう。
○質問者 普通のは真っ直ぐというわけでもないのか。横の足のところ。
○鶴田 足のところも曲がったりしていますね。曲がらないとここが足りなくなる。長さが、背もたれの部分、足りなくなりますので。
○質問者 ああ、そういうことか。
○質問者 これ、右の図面から左に行くのに、あと何の情報が必要なんですか。
○鶴田 これは、角度が載っていないので……
○質問者 全ての角についての角度が必要ということですよね。
○鶴田 そうですね。
○質問者 すごい。
○鶴田 今ちょっと変な形もつくってみましょう。
あまり細かい話はしないですけど、やはり誤差は残ります。反復計算でやっているので。全体のサイズからすると少ないですけど、拡大してみるとやっぱりすき間があいていますね。ここですね。
あとは、手作業でもできるんですけど難しかったので、三次元のデータを測定して、紙でつくったものを測定して、それに近くなるように条件をつけてやるというふうにすると、ちょっときれいなものができましたねということですね。
あとは、今回は厚みとか重力、強度とかもそうですけど、その辺は考慮にはいれず、単純に外側の形だけやったので。左は設計した形状の内側を埋めて、出したものですね。その上に紙を張り合わせてみる。そうすると、微妙に紙が足りなくなる。内側を埋めてその外側に貼っているので、ちょっとだけ紙が足りなくなりましたという話です。
あ、これ、冒頭に言いたかった。これ、もともとのオリジナルデザインというのは日本の建築家の方のものなんですけど、その方がこういうふうに試作を大量につくって、どの曲げぐあいがいいかなというのをやっていたんですけど、紙のみで目的の形を保持するのは難しいという問題があります。これは、さっき何で3Dプリンタを使ったのかという言いわけですね。
○質問者 その方は特に何も、コンピュータグラフィックスとかは使わずに……
○鶴田 使わずに、もうひたすら紙と、こういう感じで何パターンもつくって、そういうのを何とかなしにしたいよねというようことで。実際に使ってもらったわけではないですが、こういう話があるということです。
これで終わりですね。いい時間かと思います。前半部分は、折り紙研究の概説というほどでもないですけど、いろいろ紹介させていただきました。あと、僕がやっていたこと、折り畳みパターンの話と、もう少し立体的な折り紙の形状の話ですね。これらをしましたというところで終わりにさせていただきます。
ありがとうございました。
○司会 どうもおもしろいお話をありがとうございました。
では、何か質問等があれば。
質疑
○質問者 最後のやつで、ユーザーは頂点を動かすということを言われていましたよね。
○鶴田 はい。
○質問者 だから、台形の頂点を動かすイメージでやっていく感じなんですかね。
○鶴田 どの辺だったかな。この辺ですね。
○質問 はい。その点を動かしましょうというイメージなんですかね。
○鶴田 ちょっと線が見にくいんですけど、実際にはたしかここがつながっていて、これが今選択した位置ですね。これが目標位置です。なるべくここに近づけたいんですけど、厳密に近づくかどうかというのは、ここがひっついていなきゃいけないので、ここがひっついた状態でこれをここに持ってこられるかどうかというと、この状態だと持ってこられているのかな。あ、移動した後かな、これ。
○質問者 最後の応用というか、使う想定からすると、頂点ではなくて、何か単純に面のある特定の位置がここに来てほしいみたいな使い方のほうが、使いやすかったりはしないですか。頂点を意識してつくらないような気がするので。
○鶴田 そうですね。
○質問者 だから、連続のものの点がここに来るような、頂点をどこにするかはもうコンピューターに全部お任せのイメージなのかなと思っていたんですけど、そうではないと。
○鶴田 現状ではそうではないですが、おっしゃるとおりだと思います。ただ、面で考えると、例えば面のこの……
○質問者 それが多分大量に点数を置いていくのかもしれない。それが難しいところかもしれないですけどね。
○鶴田 それは実装の問題だと思います。あと、エラー関数のつけ方ですね。
○質問者 逆に連続の絵が――絵というか、三次元の立体が与えられたときに、それを折り紙で再現するにはどうするかというのは難しいですか。連続面に近いような折り方を提案してくれるようなシステムというのは、例えば一番最後の絵で、設計士がつくった立体がありますよね。それの三次元データを入力して、それに一番近い折り目をかちゃかちゃと折って再現してくれる。
○鶴田 切り込みが入っていないものであれば、研究があります。折った形状をスキャンして、それを紙で再現できるような形で再現するというのはありますね。同じような手法を使っています。
○質問者 三次元メッシュで切れるものだったら、さっきのウサギの話を使えば何でも可能ですよね。
○質問者 そうだね、確かに。
○鶴田 何でも可能ですね、言ってしまえば。あれもあれで折り目がぐちゃっとなるんですけど。
○質問者 素朴に、この話というか、今インタラクティブなシステムを構築しているところはすごいなと思うんですけど、何がモチベーションだったんですか。何が発端だったんですか。
○鶴田 何が……
○質問者 だから、建築家の方たちのがまずは発端としてあって……
○鶴田 このケースでいえばそうですね。もう少し話をすると、ふだん折り紙の、僕みたいなこういうソフトウエアをつくる方がどうやってやるかというと、やっぱり最初は手で折ってみて、こういうおもしろい形ができたね、と。じゃあ、これはどういう数学的な仕組みで説明できるのかなというのを考えて、あとはそれをシステムで実装するというような流れですね。三谷先生もそうですけど。なので、例えば最初の球体みたいな折り紙、曲線を使った折り紙がいろんな発想からできたとして、その折り目の位置とかはどういう数式で表現できるのか。そういうのを考える。あとは、ソフトウエアにするところは全部数式を落とし込むだけです。対話的なインタフェースとか、どういう操作をするとかの話ももちろんありますけど。インタフェースの話は、おっしゃったようにやっぱりいろいろ使い勝手の話とか、例えば頂点を動かしたいときに動かない場合、うまくユーザーに提示するとか、そういうところももちろん必要になってくる。その提示方法とかはまた別の話になってきますね。
○質問者 すみません、鶴田さんがやったことの1つ目のやつで……
○鶴田 パターンの。
○質問者 パターンのやつで、何回折るところまで……
○質問者 根性を聞きたいね。
○質問者 現実の、リアルタイムじゃないんですけど、生きている間に計算できるのか。
○鶴田 僕は、スパコンは使わないのであれですけど……
○質問者 スパコンとかは別に関係なくて、適当でいいです。
○鶴田 4回の時点で、この条件でいくと13万ぐらい。5回のやつは、実際計算していないんですけど、何でしなかったかというと、大体5億ぐらいになるかなというところで……
○質問者 時間的には、4回のやつはどれぐらいでできたんですか。
○鶴田 4回はそんなにかかっていないですね。論文を見ると出てくるんですけど、大して、例えば何日とか、そういうレベルでもないですね。
○質問者 じゃ、5回もできるんだ。
○鶴田 5回もできます。
○質問者 まあ、メモリが死ぬのか、何が死ぬのか。
○鶴田 書き出しておかないと。
○質問者 もう忘れていいもんね。
○鶴田 そうですね。
○質問者 じゃ、これは、もし鶴、何回折るのかわからないですけど、あれもあの公理に従わないんですかね。
○鶴田 鶴はもうちょっと複雑な折り方が入っているので。羽を広げるところとかすごく複雑ですよね。なので、これからすると鶴というのはものすごく複雑になります。
○質問者 じゃ、できないのか、あの公理にもし従わないと。
○鶴田 それはだめです。
○質問者 拡張しないと。
○質問者 20何回のやつに鶴が入っていたら感動ものだよ。
○質問者 確かに。
○鶴田 ただ、鶴自体は、折り目の位置というのはやっぱりふちとふちを合わせるとか、そういうものには従ってはいるので。だから、そもそもその折り方に従っていないのは全く出てこない。1回でも2回でも出てこないので、折り目の位置に従ってという意味ではそうですね。
○質問者 平面折りも――平面折りというか、平面に最後するという普通の折り紙のパターンで、折り紙で絶対にできない形というのはあるんですか。何かそういう証明があったりするんですか。その辺の、どこまでは絶対できるできないという。多角形で……
○鶴田 任意の多角形が折り紙の平坦折りで折れるか。それは証明されていないですね。
○質問者 ちょっとおもしろそうですね。
○鶴田 それはちょっとやりたいなと僕も思っているんですけど。
○質問者 折って映したときの折り面の形とか色も全部無視したとして、形状だけ……
○質問者 さっきも言ったエビみたいなやつ。
○質問者 でもあれ、立体だからちょっと難しいのか。
○鶴田 エビはまた話が……。バッグをあけると折り紙が出てくるんですけど、例えばこの鋭角な部分はこういうふうになっていますね。穴とか。
○質問者 穴がああやってある以外は何でもできちゃう。
○質問者 穴があいているな。
○質問者 穴2つ。
○質問者 長い棒があったら、何回か折ったら何かできそうな気もする。
○鶴田 つながっていれば、例えばこれをひたすら細長く折っていって帯みたいな形にしちゃえば……
○質問者 穴2つもできちゃうか。
○鶴田 できてしまう。
○質問者 そうすると、確かに何でもできそうな気がする。
○質問者 1回離れているものがくっつくという意味で穴なんだね。
○質問者 もちろんそれは許したとして。
○鶴田 だから、こういうような話ですよね。
○質問者 ああ、そうそう。
○鶴田 繰り返していくとどんどんできますけど。こういう折り方が見つかるかというのはものすごく難しいお話だと思いますね。
○質問者 こういう折り方を限定したときにどうなるかというのは、かなり……
○鶴田 そうですね。
○質問者 今の話、僕の中では関連しているんですけど、さっきからどう説明したらいいのかちょっとわからないんですけど、紙のものをこう折る。多分全てそうなっているんじゃないかと予想しているんですけど、折り紙って中に空洞をつくって畳むというのがないですか。
○質問者 鶴のようなもの。
○質問者 あるよね。
○質問者 その説明がしづらい。
○質問者 三角形を2回折って、次に鶴をつるすところの……
○鶴田 はいはい、わかりました。それは……
○質問者 公理に入っているんですか。
○鶴田 入っていないです。これ、数え上げの条件のポイントが2つあって、まず折り目の位置の決め方ですね。位置の決め方というのは、さっき言ったこれですね。
○質問者 それをこう畳むことってありますよね。
○鶴田 ありますね。これは折り方の技法的な話で、山折り・谷折りではないんですよね。
○質問者 それに相当する折り目はつけられますよね。
○鶴田 位置だけでいえば。だから、これをやると位置だけの話になる。だから、多少違った話になりますよね。
○質問者 さっきの、何ていうの、びゃーんとはねるやつがあったじゃないですか。それはそんな感じになっていないんですか。
○鶴田 あれはまたちょっと違う話になりますね。これとは関係ない話ですね。
○質問者 鶴は、だから、これを何度やっても出てこない。
○鶴田 というのは、折り方の、こういう技法、テクニックの話です。
○質問者 技法に入っていないので出てこない。ちょっとわからないんですが、さっきのように開くのって、全部開かずとも同じ折り目はつけられるものですか。
○質問者 折り目はつけても折れはしないんじゃないか。
○質問者 でも、折り目がつけられるということは、さっきの開くやつは少なくともできますよね。あの公理に従って。
○質問者 ただ折るだけだもんね。うん、できるはず。折り目だけはつけられると。
○質問者 折り目はいいんだけど、折ることはできない。
○鶴田 折ることはできない。なぜかというと、山折りと谷折りが重なっているんですね。やっぱり折り方の話になってきちゃうんですね。
○質問者 山折り・谷折りの区別はしているんですか。
○鶴田 区別という意味では、最終的な形だけで見ているので、していないですね。
○質問者 例えば1回目を見ても、ただ裏表……
○質問者 どっちでも関係ないもんね。
○鶴田 この形ができるかどうかという話なんですね。この内側に折り込まれた形。
○質問者 その折り方が入っていないんだ。
○鶴田 入っていないです。
○質問者 山折りをします、谷折りをしますという折り方しか入っていないから。
○質問者 それはどうしてそれが含まれなくなっちゃったの。
○鶴田 折り技法の話ですね。折り方のテクニック。これは、中割り折りというもので、山折り・谷折りではこの状態には行き着かないんですね、どうやって折っても。
○質問者 それって、山折り・谷折りを区別しないというならできますよね。
○質問者 そうそう。結局、展開図だけ見たら線は入っているわけだから。
○鶴田 展開図だけ見たらそうですね。
○質問者 これをこうやって折れば同じものができますよね。
○鶴田 形だけ見れば。その次の一手が違ってくるんですね。
○質問者 ああ、そうか。そこでおしまいだったら関係ないけど、その次の話にいくと……。何回折るんですか。
○鶴田 さっき言った内側に入っている状態と外側に入っている状態で、見た目は確かに一緒なんですけど、次のステップで、ここから得られるものとここから得られるものというのは違うので。
○質問者 だから、保國君は、展開図が一緒だったら物は一緒と思っているんでしょう。
○質問者 はい。
○質問者 そうじゃなくて、展開図が一緒でも折る順番が違って、立体――立体というか、紙のレイヤーが違ったら別物と数えるから、でき上がったもので判断する。展開図じゃなくて。偶然一緒になっちゃう展開図もあり得るけど。
○質問者 それは当然あり得るということだよね。
○質問者 だから、折ったやつと開いたやつはもう別物。展開図は一緒だけど物は違う。
○鶴田 そうですね。
○質問者 折り紙の研究をやられている方から見て、今のが公理に入っていないというのはどういう理解をしたらいいんですか。つまり、鶴が折れないということなんですよね、きっと。
○質問者 じゃなくて、公理はもっとあるけど、数え上げには使わないと。
○質問者 ああ、そうか。
○質問者 一般的なものなので入れていないという。
○質問者 一般的なものと。
○鶴田 これ、飛ばしましたね。
○質問者 これを見ても全然わからない。
○鶴田 これは数式を書いただけなので、例えばどれだろう。
○質問者 あ、これ、おもしろいじゃないですか。
○鶴田 これは辺と辺を合わせた状態ですね。
○鶴田 あとは、点を置くという操作もありますね。自動的に点はつくられるんですけど、折り目があったときにその交点に点を置くというような操作も入っています。この折り方だけ使ったのは……
○質問者 そのうち3つを使用だったのか。
○鶴田 そうです。
○質問者 この3つに鶴のあれは入っている。
○鶴田 入っていないです。
○質問者 入っていないんですか。
○鶴田 説明が難しいですね。折り目の位置の問題と折り方、技法の問題。折り線の位置の決め方と技法の問題は別個です。
○質問者 ちなみに技法って、山折り、谷折り、中割り折り、何個ぐらいあるんですか。
○鶴田 山折り、谷折り、中割り折り、名前がついているものでいうと、花弁折りとか沈め折りとか、5、6、7、そんなものですね。
○質問者 それは、だから、1回折ったという話ではなくて、例えば紙上のある点とある点を結びつけるのに何通りの技法があるという意味ですか。何回折ってもいいんですか。「W」の字に折っても、ある点とある点を結びつけることはできるわけでしょう。そういうことは含まないのか。技法って何だろうと。
○鶴田 いい質問です。鶴を折るときこう折りますよね。これって、複数の折り線が連動しているかどうかというところもポイントになります。山折り・谷折りというのは、位置的には全部重なっています。
○質問者 そうですよね。
○鶴田 こういう折り方は、ここの線もここの線も同時に動いているんですよね。そういう折り方というのは今回入っていなくて、例えば鶴の折り方で、こうやって折りますね、折り目をつけてから。これはできます。これもできます。だから、折り目はつきます。でも、この4つの辺を同時に連動させて折るというのはできないと。だから、折り目の位置の決め方と折りテクニック。
○質問者 技法は、数学的にこれで全部だというのはあるんですか。
○質問者 あ、それ言いたい。
○鶴田 それはないです。
○質問者 ないのか。それが全部出尽くすと、要は折り紙で折れる図形を全て列挙できるということですよね。
○質問者 そのとおりだ。
○質問者 この公理プラス、ルート何とかのところにオノダとかいう人が出てきてやるかもしれない。
○質問者 けど、今のやつは、要は、確かに対角線というか折れ線は使っていないけども、物理的には折れるものだし。
○質問者 物理的に折れるという制約の全部……
○質問者 あ、ここに入らないか。
○質問者 いや、もっと何かよくわからない折り方が出てくるかもしれないとか。
○鶴田 折り方とちょっと別の話になるんですけど、例えばこういう折り目、開いたときの状態から折った状態は推定できるかという問題があります。
○質問者 ああ、なるほど。
○鶴田 それが何パターンあるかと。それは数え上げる手法がもうありまして、例えばこの状態で線分と形があらわれたら、山谷はもちろんついている状態で幾つパターンが出るかというのは出てくると。ただ、そうやってこの展開図の情報からやると、折り工程という話は全部無視されるので、要するに、途中で1回開いて内側へ折り込んで、また閉じて戻すみたいな操作をしないと出てこないような紙の重なり順というのが、また出てくる可能性がありますね。
○質問者 開いてというのは、途中の、最終的には使わなかった目印用の線はないものという意味ですか。
○鶴田 展開図からパターンをばーっと出すと、幾つかそういう……
○質問者 展開図の中に、最終的に折ったときには使われていない線とか、目印用に1回折ったやつとか、それは展開図には含まないんですか。
○鶴田 基本的には含まないです。
○質問者 ああ、なるほど。だから、逆に難しいと。
○質問者 そういうことかもしれないですね。
○鶴田 だから、折り工程というのはまた別の話になってくる。折り工程、折り技法とかというのは。
○質問者 じゃ、ライオンか何かで、めっちゃ折り目をぎゅうぎゅうにつけたやつを開いたみたいな。おもしろいね。
クロージング
○司会 じゃあ、ちょっと、いろいろまだこの後も議論は盛り上がりそうなんですが、一旦ここで閉めさせていただいて、それで、もしきょう鶴田さんもこの後お時間があれば、そのときにでもいろいろお話を伺えればと思います。
では、とりあえず1回閉めます。どうもありがとうございました。(拍手)
プロフィール
2015年3月筑波大学大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻博士後期課程修了。博士(工学)。2015年4月より現在、東京工科大学メディア学部助手。折り紙をテーマとした形状設計手法や対話的な設計支援システムに関する研究に従事。日本図学会、情報処理学会各会員。ホームページ: http://grusfield.com/tsuruta/